校正
鉛筆入れしてくれる校閲さんの美文字にいつも感動

校正するために出してもらう「ゲラ」と呼ばれる校正刷り。ここに校閲さんや編集者が赤字を入れて、誤字脱字の指摘や事実確認のための疑問出しをしてくれます。

さて、全て書き上げたら、何度か編集者とやり取りをして修正した後、デザインにテキストを流し込んでゲラ(校正するために印刷したもの)にします。ゲラのやり取りが何回かはケースバイケースのようですが、私の場合は2往復しました。その間、校閲が入り、誤字の修正はもちろん、事実確認や表現の確認をしてくれます。

毎回驚くのが、校閲さんの鉛筆の文字の美しさ。細かい部分まで丁寧に見てくれ、指摘だし(「これでいいですか?」など)をしてくれます。それに対し、反映するかどうかを赤字でチェックを入れていきます。

 

タイトル決め
タイトルは「自分でつける」とは限らない!?


本のタイトルや表紙は、どうやって決めているのか、と思われるかもしれません。これもケースバイケースですが、やはり編集者と話し合いで決めます。1冊目のときは、編集者と案を出し合って、その中から決めました。膨大な数の本の中で目が留まるか、読みたいと思ってもらえるかがとても大事。特に新人だと、名前が知られていない分タイトルがより重要です。売れるかどうかが重要なポイントなので、抽象的なタイトルを付けたい気持ちをぐっと我慢し、分かりやすさもあるものにしました。

2冊目のときは、書籍編集部の他の部員の方が、「“死ねない理由”というタイトルはどうか」「本の内容の案を聞いて、表紙に目力の強い女の人のイラストがいいと思った」と提案してくれ、それがしっくりきたので、そのまま採用となりました。

ちなみに、後から聞くと、編集者が最初に考えていたタイトルは「持たざる者の幸福論」。ご本人も「ダサいよね」と思いながら挙げたそうですが、後から聞いたときは思わず笑ってしまいました。「死ねない理由」になってよかった……(笑)。

装幀(そうてい)
プロの手によって徐々に「本」の形になっていく

『死ねない理由』のカバー、帯、表紙デザインの見本。装画は金井香凛さん、装幀は鳴田小夜子さんが担当してくださいました。

ゲラの確認作業をする頃、装幀(本の表紙など)の打ち合わせも進めて行きます。本の装幀家が、表紙や背表紙など本全体のデザインをディレクションしてくれます。

装画を描くイラストレーターは装幀家が提案してくれますが、私の場合は2作とも自分で選ばせていただきました。イラストの好き嫌いが激しいタイプで、100人見ても刺さるのは1人いるかどうか。日頃から気になるイラストレーターさんをチェックしリストアップ。あらゆる本の装画をしらみつぶしにウォッチしました。

1冊目も2冊目も、お願いしたのは「装画は初めて」というイラストレーターさんでした。初めてということは、どうなるかは未知ですが、無限の可能性を秘めているということでもあります。

イラストを見て感じたこの人しかいない! という直感を頼りにオファーしましたが、結果的に、想像を遥かに超える装画を描いてくださいました。著者や装幀家から、ざっくりと「こういうものを描いてほしい」というのは伝えますが、どんな絵を描くのかはイラストレーターさんに任せる部分も大きいです。1作目と2作目をお願いした二人のイラストレーターさんは、本全体を貫くテーマや、文章のトーンを汲み取ってくださり、独自のセンスで見事に装画に落とし込んで表現してくださっていて、初めて見たときは震えました。いつも装画を描いている方にお願いすれば、外れはないのかもしれません。でも、ここまで感動することもなかったのかも? なんて思ったりして、冒険することの重要性を改めて感じさせられました。

本は、著者や編集者はもちろん、装幀家、イラストレーター、(場合によってはカメラマンやヘアメイクなど)、校閲者、印刷所の人など、各分野のプロフェッショナルがそれぞれ最大限に力を発揮して、初めて形になります。執筆中はめちゃくちゃ孤独ですが、それぞれの力が合わさって、ゼロから新しいものを作れる喜びは他では得られないものだと感じます。