ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常に感じる思いを綴る連載です。
先日、美容院で髪の毛を乾かしにきてくれたアシスタントの女性が、40歳を過ぎても白髪がないわたしの髪を見て、
「白髪ってほとんど遺伝なのですがご両親の髪ってどんなでしたか」
と聞いてきた。
シルバーホワイトのボブに憧れを抱く当方としては一刻も早く出ていただいてまったく問題がないのに、そういうことに限ってなかなか叶わないのが人生の醍醐味なのだろう。
だって、人生ってうっかりしっかり長いからそう簡単に願いを叶えてもらっていたら時間を持て余しちゃうもんね。恋焦がれるものがないとヒマが潰れない。
実際、白髪は遺伝だと聞いても母親は50代で他界していてその頃のわたしは20代。親の白髪を観察するような中年マインドで彼女のことを見ていなかったし、父親は現在70代で、白髪の発生を評価する対象としては老いすぎている。彼はもう頭が真っ白なただの痩せたじいさんだ。
白髪に関して我が家の場合は格別ピンと来ていないが、年を経るにつれて親に似てきたなと感じることは確かにある。
壮年期は恰幅の良かった祖母や父も老いて痩せてみるとそれぞれだと思っていた3人の手足の形は祖母→父→わたしで瓜3つだった。BBA(わたし)と前期高齢者(父)と後期高齢者(祖母はまだ存命)になってはじめてわかることもある。
そして、最近どうしても母からの遺伝を感じずにはいられないのは『病的なサイズのイヤリング好き』であること。これは、もう身体的な特徴以上に長期にわたるDNAレベルでの刷り込み教育によるものだ。
ひよこが生まれて初めて見たものを親だと思うように、大きなイヤリングをした人を長年見続けると、『大人の女性とはかくあるべきだ』と思うようになったと言ってよい。
『佐藤家の家訓』もしくは一種の教義のようなもので、わたしのファッション脳の中にかなり深く根ざしている。そして彼女譲りのイヤリング狂ぶりはわたしの代でさらに自由度を増し耳たぶへの負担は年々増している。
孔雀が、あのとんでもなくド派手な羽を広げて相手を威嚇もしくは求愛をするように、わたしもとんでもないイヤリングで相手を牽制し、また、相手を惹きつける。
ゑ、、、?
それ大丈夫そ?
イヤリングへの重めの愛がだんだんこじれて来つつあるのが実に不安だ。
とにかく、なにが言いたいかというとまた、並外れた大きさのイヤリングを買ったということです。
いま耳たぶからため息がひとつ聞こえた気がするけれど、今日もこちらはご機嫌で過ごさせていただきますよ。
スタイリスト佐藤佳菜子さんのコーディネート
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バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/堂坂由香
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