さらにパワーアップした劇場版

©2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会

コメディパートはますますパワーアップして、ツッコミの手が足りなくなるぐらいだし、恋愛パートは春田と牧の幸せを願いすぎて、たぶん途中から口呼吸していなかった。連ドラからのファンの方たちならきっとすぐあのテンションに戻れるだろうし、初見の方はぜひ自分がどちらのタイプになるかも楽しみにしながら観てほしい。

そして試写室を出た僕が、眩しい陽の光を見上げながら噛みしめたのは、彼らの夏を見られて良かったという感謝。

去年の6月、まだ夏は始まったばかりだというのに、僕の胸にはひと夏の終わりのような心地良い疲れと寂しさが積もっていた。夏の空に伸びる入道雲。夜空いっぱいに咲いた打ち上げ花火。今年はまだ見ていないはずのそんな景色がくっきりと瞼に浮かんだのは、飽きるほど聴いたあの曲のせい。『おっさんずラブ』のテーマソングであるスキマスイッチの『Revival』。その詩の中で描かれてた夏の恋に、何度も春田と牧を重ねたものだ。

だけど、ドラマの舞台は春だった。僕たちは春田や、牧や、部長や、天空不動産のみんながどんな夏を過ごすかは想像するしかできなくて。それが、唯一の心残りだった。

でも、こうして2019年の夏を過ごす彼らが見られた。きっとこれから『Revival』を聴くたびに思い出すだろう、春田や牧、部長と過ごした2019年の夏の日を。そんなふうに一緒に時を刻めたことが何よりうれしかったのだ、僕は。

もちろん映画は上映が終わってもDVDやBlu-ray、あるいは配信で何度でも楽しむことができる。でも、春田たちに会いに、うだるような暑さの中、映画館に通う日々は、絶対に帰ってこない。だからこの夏を思い切り満喫するために、今年は何度でも映画館に通おうと思う。

春田や牧、部長と過ごす、一生モノの、一度きりの夏が、明日、ついに幕を開ける。

<作品紹介>
『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』

©2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会

8月23日(金)全国ロードショー
監督:瑠東東一郎 脚本:徳尾浩司 音楽:河野伸
主題歌:スキマスイッチ「Revival」(AUGUSTA RECORDS/UNIVERSAL MUSIC LLC)
出演者:田中圭、林遣都、内田理央、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉 ・ 沢村一樹、志尊淳 ・ 眞島秀和、大塚寧々、吉田鋼太郎
©2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会
配給:東宝

 

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

「『おっさんずラブ』ファンを襲った林遣都大飢饉と恵みの雨」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。