さて「事務で正社員の仕事につくことは43歳の今からでも可能ですか?」とのご質問ですが、一般的に40代以降の転職の正否は、持っているスキルと人間力にかかってきます。この人なら一緒に働きたいと思ってもらえるスキルと人間力があるかどうか? 会社に何かを期待するより、まずはその2つを身につける努力をされることが大切だと思います。

 

私はアメリカ系の外資系企業に勤めていたのですが、アメリカの会社は、「アナタが何をしてくれるか」ということを重視します。そのため働いている人たちは皆、「会社が何をしてくれるか」ではなく「自分が何をできるか」ということを考えていて、いつ聞かれても言葉にして言えるようにしています。Niohさんは今日まで23年間働いてこられているとのこと。きちんと棚卸ししてみれば、「これが強みです」と言えるだけのキャリアはあるはずです。たとえば「アパレルに関する事務なら私の右に出るものはいない」など。逆にそれくらいハッキリ言えるレベルでなければ、40代で良い条件で正社員になるのは難しいと思います。

さらにそのスキルも、止まったままではいけません。自分で常にアップデートしていくことが大切です。大企業でさえ存続が危ぶまれる昨今は、今この瞬間から貢献できる人材でなければ、「長く勤められる会社」どころか、長く働くことじたい難しい。ですから目標を、「正社員になる」ということより、「長く働くために自分をアップデートし続ける」ということにマインドシフトされたほうが良いと思うのです。何より40代というのは、もう「会社に何かをしてもらう」という年齢ではなく、「社会に何かを提供する」という年齢だと思いますから。

私も30代と40代では働き方が大きく変わってきました。30代の頃は、「今は自分のスキルを伸ばす時」と考え、自分で仕事を見つけ、必死に取り組み、結果を出してきました。だから部下を育てる立場になっても、そのスキルをどうして後輩に教えなきゃいけないの?と思っていました(笑)。でも40代に入ると、一人でできることには限界があると気づいた。だから部下やチームを育てることに意味があるんだ!とピンときたのです。そこから仕事におけるマインドも、「いかに自分の知識を渡し、逆にその人ならではの新しい取り組みから学べるか」に変わったのです。その結果、以前よりも仕事の範囲が格段に広がりました。今こうしてフリーランスとして独立して仕事できているのも、そういうマインドシフトができたことが大きかったと思っています。

簡単なことではないと思いますが、Niohさんもそのように視点を変えてみられてはいかがでしょうか? そうして自分をアップデートしていければ、何歳になっても求められる人材でい続けられると思いますよ。
 

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・リストラ→転職先でパワハラ→退職。40代から会社に頼らず生きる道とは

PROFILE
  • 土屋香里20年以上にわたり「SK−Ⅱ」のPRとして活躍。世界的化粧品ブランドに育て上げ、“伝説のPR”と呼ばれている。2018年に独立、フリーのPRコンサルタントとして活躍中。20代頃、会社が外資系企業に買収され、社内公用語がいきなり英語に変わるという経験も。日本だけでなく、グローバルのPRマネージャーとして海外にも赴任。多国籍のPRチームをまとめ、日本内外のたくさんの部下や後輩を育てた、という経験を持つ。 この人の回答一覧を見る
  • 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
 取材・文/山本奈緒子

 

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