以前に小学生の子供を闘病の末に亡くされたお母さまとお話する機会があったのですが、彼女はその後、夫とは子供のことに関して話したことがなかったそうです。しかし10年もの月日が経ってからたまたま機会を得て、夫の思いを聞いたとき、「そんなことを思っていたのか!」と大変驚いたそうです。同じ親でも、それくらい想いは違うということ。だからこそ、それぞれの想いをそのまま大事にすることが何より大切だと私は思います。
もしコロナウイルスが落ち着いてお祖母さまが出かけられる時がきたら、叔父さまのお墓参りをご一緒にされてはいかがでしょう。そのときにお祖母さまが「私ばかり長生きして」とおっしゃったなら、勇気を持って「どうしてそう思うの?」と尋ねてみてはいかがでしょう。そして、そのときお祖母さまから出てくる言葉をどうか丁寧に聞いて差し上げてください。それこそが、お祖母さまを愛する周囲の人間ができることではないでしょうか。
言葉とは、想いが形になったものです。そして、想いを形として外に出すのは大事なことです。苦しいときには特に……。叔父さまはどんな息子だったのか、叔父さまが結婚したときはどんな様子だったか、お祖母さまはどんな思いで叔父さまを育てたのか……。ただ聞いてあげるというよりも、もう少し“聞く”ということを深く捉えて、お祖母さまが自分の想いを形にできるように、と意識して聞いてあげてほしいのです。
私の知る人の中に、娘さんと同居していた100歳の女性がいらしたのですが、彼女は病を得たとき、「絶対に家で死にたい」と言っていました。なぜかといいますと、「娘が心配だから」と言うのです。子に対する親の想いというのは、それくらい計り知れないものです。他の誰のものでもない、その人だけの想いがある。是非メロロンさんには、それを聞いて差し上げてほしいと思います。
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- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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