「お金のプロの方は、お金についてどんなふうに考えているの?どうつきあっているの?」というミモレ編集部の疑問から生まれたインタビュー企画。マネー業界のトップの方々に「お金の価値観」についてじっくり伺っていきます。
今回ご登場いただくのは、マネックス証券社長の清明祐子さん。40代でネット証券会社の社長に抜擢された清明さんに、マネーコラムニストの西山美紀とミモレ編集部員の片岡が話をじっくり伺いました。

<今回お話を伺ったのは……>

 

清明祐子さん
2001年に大学卒業後、新卒で三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。2006年からMKSパートナーズ(プライベート・エクイティ・ファンド)の参画を経て、2009年2月にマネックス・ハンブレクト(2017年にマネックス証券と統合)に入社し、2011年に同社社長に就任。2019年4月よりマネックス証券代表取締役社長(現任)、2020年1月マネックスグループ代表執行役COO(現任)。

 

――いきなりで恐縮ですが、マネックス証券という有名なネット証券で、女性の社長でいらっしゃることに、驚く方は多いのではないでしょうか?

清明祐子さん(以下敬称略):はい、ありがとうございます。40代で女性で……ということで、同じ年代の応援してくださる女性もいらっしゃって、ありがたいですね。
弊社のお客様は7割くらいが男性なので、女性のお客様も増えるとうれしいなと思っています。

――金融業界に長くいらっしゃって、ご自身は「お金」とどう付き合っているのでしょうか。

清明:意外だと言われるのですが、「お金は持っているだけでは価値がない」と私は思っているんです。
ここに千円札や1万円札があったとしても、そのまま置いてあればしょせん“紙”でしかありません。このお金を使って、どれだけ増やせるかが大事だと思っています。
“増やす”いうのは、株や投資信託などへの投資によって金額的に増やすことだけでなく、お金を使うことで、自分にとってプラスの形で返ってくるというイメージです。

経験が身について仕事の報酬が増えることだけでなく、例えば英語の勉強をしたら見える世界が変わったりもしますよね。人と新しい出会いがあれば楽しみが増えますし、自分の生きていく幅が広がると思うのです。
お金というのはそういった“ツール”に過ぎないと考えていて、お金を使うことはまったく厭わないんです。

――お金を貯めこむタイプとは真逆なのですね。

清明:はい、「使ってなんぼ」だと思いますね。お金に関してこういう考え方になったのは、私自身の育ってきた環境も大きく影響していると思います。ごく普通のサラリーマン家庭だったのですが、親がとにかく“新しいもの好き”で……(笑)。
親機から数メートルしか離れられない、初期のコードレスフォンが発売されたら真っ先に買っていましたし、冷蔵庫などの電化製品がよく新しいものに変わっていました。比較的外食も好きでしたね。

母親は顔が広くて、気前も良く、私の友達もみな友達。遊園地に行くときなど、「友達を誘ったら楽しいんじゃない?」と一緒に連れていくんです。特にお金もいただきません。「ケチはアカン」というのが母親の信条。そうやっていると自然と人も集まってきて、とにかく笑顔が多い家庭で楽しかったですね。
なので、お金を貯めこむより、お金をうまく使って笑顔が多い方が豊かな人生になるなあ、と思っています。

 

――お金の価値観という点では親が子どもに与える影響は大きいですね。

清明:そうですね。そういった環境で育ったからか、「これは私のもの」と囲ってしまうような意識がないんです。親はお金の教育をしようと思ったわけじゃなく、単に性格だと思うのですが(笑)、結果的に自分自身が豊かな人生を送れていると感じています。

 
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