母が教えてくれた食との向き合い方

 

働き方だけでなく、弥生さんは食生活においても先進的。もともと玄米食やマクロビオティックを取り入れており、昨今人気の腸活、また食ロスを防ぐための地産地消といった考え方も、かなり早い段階から取り入れていたのです。

 

「自分では意識がないんですけど、周りからよく『そういえばこれ、10年ぐらい前から言ってたよね』と言われることがあります。
私の場合、母親が玄米やマクロビで育ててくれたので、自然と食についていろいろ考える癖が身についていたんだと思います。母はたとえば、お野菜を庭で作ったり、お茶も庭のビワの木の葉を乾燥させて淹れたり、薬草も庭から摘んで煎じたり、ということをしていて。
だから私も、何でも自分で作ってみようかなと思いますし、食材の効能や効果的な食べ方などについても一つ一つ考えます。人より早く取り入れたというより、もともと家族の影響で下地ができていた。それを、さらに大人になってから自分で学び直した、という感じだと思います」

弥生さんは植物療法やホメオパシー、韓国のハンバン(漢方)などに詳しいことでも知られていますが、それらを本格的に学ぼうと思ったのは、同じくお母さんの影響が大きかったと言います。

「母はおそらく、『世の中に当たり前にあるからいいとは限らない。もっと、本当に体にいいものがあるはず』と肌で感じるものがあったんだと思います。それで本などから独学で勉強していたのでしょうけど、私の時代になると学問として確立されてきた。
そこで私は『じゃあしっかり勉強してみよう』と、ドイツのフランクフルトに行ってホメオパシーを学んだり、韓国に行ってハンバンを学んでみたりしていたんです。最初は趣味の延長のような感じだったんですけど、その後、植物療法士の森田敦子さんと出会い、そこからは本格的にフィトテラピー(植物療法)を勉強したんです」


服も厳選、徒歩圏内で手に入るものだけで暮らしたい

 

独自の働き方や食スタイルを伺って見えてきたことは、“世の中に当たり前にあることを当たり前と思わず、肌感覚でしっくりくるものを大事にしたい”という弥生さんの哲学。前回シルバーヘアにした理由を伺ったときも、“白髪=隠すべきもの”という世間の刷り込みに惑わされず、「自然な髪色は美しいと思う」ときっぱりとおっしゃっていました。
そんな弥生さんが今、肌感覚で「こうしていきたい」と感じていることは何なのでしょう?

「年齢を重ねるにつれて、減らすことの大切さを実感していて。それでここ数年、ファッションはわりとその方向で変化をしてきたんです。それまでは、『このアイテムも好きだし、このカラーも好きだし、このお帽子のスタイルも好きだし……』と思うことが多かったんですね。

だけど数年前にライフスタイルを見直してからは、『この洋服を10年後、あるいは20年後も着たいか』という視点で選ぶように変えたんです。そうしたら天然素材だけでコーディネートするようになって。
たとえばカシミアセーターだったら、以前はデザインが入っているものもよく着ていたんですけど、今はライトグレーとベージュと白の3枚のみ。それも上質なものだけ。カシミヤはお手入れを正しくおこなえば100年着られると言われる素材なんです。

化学繊維で手頃な価格のものを買ってガンカン洗濯をして傷んだら捨てよう、というのではなくて、もっと考えた洋服の選び方をしていこうと変わっていったんですよね。だから素材もウールと麻とコットンとシルク、色も白とベージュ、たまにグレーというふうに全部決めてしまったんです。そうしたら何を着ても全てがまとまるし、ガチャガチャしないので、心が落ち着くようになりました」

その言葉を実証するかのように、グレーのカーディガンをふわりと羽織り、とてもリラックスした雰囲気でオンラインインタビューに答えられていた弥生さん。これからは洋服に限らず、ライフスタイル全般において“シンプル”を追求していきたいと考えているそうです。

「今、アメリカでの拠点も少し田舎のほうに移そうと考えているんです。そして毎日パンを焼いたり、ちょっとした手作りの美味しいものを作って、いただいて、そうやって生きていけたらいいなと思っていて。

ひと言で言うと、丁寧に生きていく、という感じでしょうか。頻繁に外食をするのも華やかで楽しい人生ですけど、胃が疲れちゃいますよね。やはり一杯のお味噌汁がホッとしますし、体が整う感じもありますから、丁寧に食べていきたい。手作りできるものは自分で作り、地産地消というか、徒歩圏内でできたものを一つずつ見つけて、取り入れていきたいなと思っているんです」
 

取材・文/山本奈緒子
構成/片岡千晶


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