乳幼児期に培われることで、成長後の基礎学力や学歴、さらには収入にも影響すると言われている「非認知能力」。子どもの成長後の心の健やかさや幸福感の高さにも関係すると考えられ、近年では世界中で非認知能力の研究に注目が集まっています。とはいえ、育児中の方にとっては、「実際に何をしたらいいの?」というのが一番気になるところですよね。

大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)さん・大豆生田千夏(おおまめうだ・ちか)さんの著書『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』には、非認知能力の基礎知識はもちろん、非認知能力を鍛える「あそび」が満載! 長年、乳幼児の教育・保育や子育て支援の現場に携わってきた2人の著者が伝える、子どもの未来を照らす育児法について、今回は特別に一部を抜粋してご紹介します。

 

「非認知能力」とは、簡単に言えば、読み・書き・計算などの「認知的能力」でない力、あるいは数値化しにくい能力のことです。より具体的には、何かに熱中・集中して取り組む姿勢、自分の気持ちをコントロールできること、他者とうまくコミュニケーションできること、自分を大事に思えること、といった力のことなのです。乳幼児期にこうした非認知能力を育むことが、成長後の心の健全さや幸福感を高め、社会的・経済的効果を高めると考えられるのです。その成果は、その時すぐにではなくあとになって出てくることから、「あと伸びする力」とも言われます。

 

では、どうしたら「非認知能力」が育つのでしょうか。第1に大切なことは、大人に愛されて無条件に受け入れられるという経験を赤ちゃん時代から得ることです。精神医学や心理学の分野では「アタッチメント」と呼ばれるものです。アタッチメントとは「不安な時に特定の大人にしっかりとくっつくことで、確かな安心感を得て、その中で形成される情緒的な絆」のこと。

子どもはありのままの自分を温かく受け止めてくれる大人がいることで、自分の気持ちをコントロールして、自発的に物事に取り組むようになります(自己抑制)。自分の気持ちに応じてくれる大人がいることがとても大切なのです。もちろん、いつも受け入れてばかりもいられませんが、子どもの気持ちに寄り添う関わり方が、子どもの非認知能力を伸ばすことにもつながるのです。

「非認知能力」を育むために大事な、もうひとつのことが「あそび」です。夢中であそんでいる子は、実は、「問い」を持っていたり、「探究」したりといった「学び」を実践しているのです。これが「アクティブ・ラーニング」です。子どもの興味・関心、意欲などを大事にするあそびは非認知能力を育てるだけでなく、知的好奇心の育ち、つまり、認知能力にもつながります。非認知能力を育むことで、「知る」という認知能力も伸びていくのです。