「結局、私は大企業の駒」40歳で転職を決めた女が思い知った現実_img0
 

40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。

これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。

これまでの話
ファッション誌の編集部でキャリアを重ねてきたアラフォー独身の進藤早希は、同期の裏切り&予期せぬ人事異動に悩んでいたが、人生を変える決断をした美穂の姿が刺激となり、WEBメディア『グレディ』への転職をついに決意した
 


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「転職します」と口に出したら……

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「転職することに決めました」

口に出してしまったら、胸のつかえが取れたようにスッキリした。

言い出すまでは後悔するかもしれないと恐れていたが、編集長のあっさりした対応を見たら未練も一瞬で消え去った。彼女は普段どおりクールな表情を崩さず、社交辞令にしか聞こえない冷たい声で「残念ね」と言っただけだった。

新卒から17年以上をファッション誌に捧げ、実績も成果も残してきたつもりだ。

しかしそれでも結局、大企業の駒でしかない。辞意を告げたことで現実をハッキリと思い知らされた気がした。

落ち込まずにいられたのは、すでに『グレディ』プロデューサー就任が決まっているからだ。

仕事の早い北山隼人が、早希の決意を聞くとすぐ面談をセッティングしてくれた。彼の言っていた通り二つ返事で採用が決まったうえ、待遇面も想像よりずっと好条件で、まずは2年間という期限付き契約ではあるものの現状を上回る年収を約束してくれたのだ。

もう、後には引けない。


「お前……辞めるんだって?」

退職が正式に決まった後、一番に声をかけてきたのはやはり堂島だった。

さすがに自分の告げ口が原因だと自覚はしているのだろう。いつもは威圧的な男が、どこかオドオドと機嫌を伺うような視線を向けている。

「転職するの。スカウトされたのよ、新規立ち上げのWEBメディアに」

――別に、あなたのせいじゃないから。

言葉にはしなかったが、そう表情に込めて作り笑顔を向ける。

堂島は明らかにホッとした顔を見せた。その単純さに内心呆れつつも、早希はもう何も言うまいと涼しい顔で背を向ける。

「あの……さ」

しかし歩き出そうとした瞬間、思いがけず堂島から呼び止められた。
 

【写真】40歳で大企業を追われた女のリアル……
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