「子持ちの女に、恋愛する権利はない」40歳で芽生えた抗えない感情_img0
 

40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。

これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。

これまでの話
夫のモラハラに悩む専業主婦の美穂は、ついに暴力を振るわれ息子の湊人と実家に逃げた。その後とうとう離婚を決意するが、経済的自立に苦戦する中、大学の先輩だった透が信じられない言葉を口にした
 


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40歳の女に芽生えた、抗えない感情
 

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「美穂ちゃんも息子さんも……俺がぜんぶ面倒見るよ」

一瞬、透が何を言ったのか、美穂は理解できなかった。

けれどその言葉を何度も頭の中で反芻するうち、心臓が大きな音をたて始めた。

呼吸が苦しくなり、涙さえ出そうになる。

透と偶然再会した夜からずっと、美穂は自分の中で何かが暴れ出しそうになるのを必死でこらえていた。

メッセージの通知を見るだけで心を揺さぶられたし、緊張感に満ちた日々の中で、彼の顔を見て声を聞いている時だけは妻や母親の顔を忘れ、ただ無防備な自分でいることができた。

けれどもちろん、主婦という身分でおかしな感情に流されるわけにはいかない。

むしろ40歳にもなってこんな気持ちを抱いてしまうことに嫌悪感すら抱いていた。何より自分は母親なのだ。ただでさえ辛い思いをさせている湊人に顔向けできないし、親切心で美穂を気遣ってくれる透にだって失礼だ。

そんな風に思っていたのに。

「突然困らせてごめん。美穂ちゃんの状況も複雑なのに……。もちろん、すぐにどうってわけじゃないよ。でも俺の気持ちは伝えておきたかったんだ。最近はつい美穂ちゃんのことばっかり考えちゃって……。あぁ、なんか馬鹿みたいだな。こんなオッサンが」

透は焦ったように頭を掻く。額にはうっすらと汗が滲んでいた。

「でも……俺、本気だから」

美穂が黙ったままでいると、透は恐る恐る、けれどしっかりと美穂の手を握った。

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