40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。
これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。
***
DVによる別居後の、妻の葛藤
「ママ、おはようー!!」
実家の温かい布団の中で目を覚ますと、もう朝の9時を回っていた。
慌てて身体を起こしダイニングへ向かう。すると母と湊人が朝ごはんを囲んでいた。
近所の人気ベーカリーの菓子パンがテーブルの真ん中に山のように積んである。昨日母と湊人が2人で出かけ買ってきたものだ。他にも卵焼きやベーコン、そして洋食には似合わない塩鮭やみそ汁まで並んでいた。
「ごめん、寝過ぎちゃって……」
「え?週末なんだから、別にゆっくり寝てたらいいじゃない」
窓から差し込む朝日の中で、2人は楽しそうにテレビを観て笑っている。
ほんの少し前まで、自分の一挙一動が夫の神経を刺激しないか24時間怯えて過ごしていたのが信じられない。
美穂が少しくらい気を抜いても、誰も何も気にしない。隅々まで気を配らなくても、誰の笑顔も消えない。
きっとこれが家族本来の姿なのだ。ここは安全な場所なのだと、美穂は改めて実感する。
ーーでも。
それでも、どうして夫がこの場にいないのだろうとつい思ってしまう。
毎日笑顔で食卓を囲める家庭。美穂が欲しかったのは、ただそれだけだったのに。
実家での生活を始めて1週間が経つ。
家を出たことに後悔はない。ついに暴力を振るい始めた貴之から離れたのは賢明な判断だった。それは頭では十分に分かっている。
けれど感情はそう簡単にコントロールできるものでもなく、失った父親の存在を考えると、どうしても胸が痛むのだった。
【写真】可愛い子供に裕福な生活……自由のない専業主婦・美穂は幸せ?
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