40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。
これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。
夫のモラハラに悩む専業主婦の美穂は、ついに暴力を振るわれ息子と実家に逃げた。その後、親友の早希に支えられ少しずつ自分を取り戻していくが、そんな中、大学の先輩である透に「俺が力になる」と言われ戸惑ってしまう。
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「手放して」こそ得られる安堵感
「今度からは、俺が力になるから」
透にそう言われた瞬間、うまく反応することができなかった。
美穂は思わず顔を背けてしまい、沈黙が2人を包む。何か答えなくてはと焦るが、口の中が乾くばかりで言葉が出ない。
若い頃、美穂が求めていたのは安心と安定で、しかるべき相手と結婚して家庭を持てばそれは叶えられると信じていた。
心ときめくような恋愛も過去に何度かしたが、幸せな瞬間もあると同時に相手を失う不安が拭えず、いつもビクビクとどこか疲れていた。
はやく結婚したい。不安な恋愛サイクルから抜け出して、ただ1人の愛する夫のそばで幸せな日々を送りたい。結婚という枠の中であれば、あの疲弊や焦燥感を感じることはきっとない。
けれど結婚生活の中でも、美穂は安心を得られないどころか夫のモラハラ支配に怯えることになり、結局は逃げ出してしまった。
40歳という年齢でこれほど不安定な環境に身を放り出すとは思いもしなかったが、しかしここに来て初めて、ほんの少しずつではあるが、美穂は本当の意味での“幸せ”を理解しつつある。
誰かと一緒にいることが安心や安定に繋がるとは限らないのだ。何かを手放してこそ感じられる安堵もある。
だからこそ、透の純粋な好意が怖いと思った。
彼に心が傾いてしまえば、美穂は再び不安のサイクルに溺れてしまいそうな気がしたのだ。
【写真】可愛い子供に裕福な生活……自由のない専業主婦・美穂は幸せ?
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