寝込むくらいなら、「軽症者」


「重症化」というと、どのくらいのことを思い浮かべるでしょうか。寝込んじゃうくらいでは、現在の分類では軽症とされます。意識を失い、呼吸をサポートするために管につながれ、管を通して呼吸をしている。そうした生命の危機に瀕している人たちを重症者と呼んでいます。

さらにこれから、ウイルスが変異を獲得していくと、子どもや赤ちゃんも重症化していくという可能性も否定はできません。100人に1人がコロナにかかり、そのうち10%くらいが重症化するという事態に進展してしまうこともあるかもしれません。

仮にそうなったとすれば、1000人に1人の確率で、生命の危機に瀕するリスクを抱えることになります。この1000人に1人のリスクと、もう一方のジャンボ宝くじに当たるくらいの天文学的な数字のリスク、このふたつを天秤にかけることになります。

そうすると、私たち医師としては、若い方でも皆さんにワクチンを打ってほしいと思う。そういうわけです。

ただ、それでもなお「まわりにコロナにかかっている人はいないし、今までも大丈夫だった。とても元気だし、なんでワクチンを打たないといけないの?」と疑問に思う気持ちも自然なものだと思います。でも、やはり病気になった後に後悔するという人を数多く目にしてきた中で、ワクチンの普及によってそういう人が一人でも減ればと強く願っています。

 


「どこかで起きているパンデミック」


一青 こうして緊急事態宣言が発令されて、実際に感染者が増えていくのを数字でみています。でも私の実感で言うと、身近に感染者もおらず、「どこかで起こっているパンデミック」という感じがします。実際に苦しんでいる人を見ることがないことが、自分はかからないのではないか、ワクチンを接種しなくてもいいのではないか、そういう気持ちにつながっている気がします。

山田 そうかもしれませんね。私たち医療従事者は、毎日、新型コロナの感染者と接していますので、これだけたくさんの人が苦しんでいるという様子を見ているのです。そういう違いはあるかもしれません。

日常生活では、感染者の方とかかわることはなかなかないですよね。実際に感染され、入院された方、重症化された方の多くは、次のようにおっしゃいます。

「まさか自分がかかるなんて思ってもいなかった」
「私の周りに患者はいなかったので、どこからもらったかわからない」

こう驚いて、病院に来る方が多いのです。ウイルスはまったく目に見えませんから、そういうものなのです。感染すると、隔離されたり、病院に入院したりしますから、日常生活で感染した方を目にすることはない、ということになります。

でも、どなたにも、そういう日が突然やってくる可能性があるということです。