年収1500万円で幸福感は頭打ちになる!?


ところで、自分の年収が増えていくと、ある程度のところまでは幸福度が上がっていくが、そこから先は頭打ちになってしまうという傾向が知られています。

 

これは年収約800万円であるという研究と、約1500万円であるとする研究があるのですが、重要な点はなぜ頭打ちになってしまうのかというところです。約800万円というのはアメリカ社会を対象とした研究ですから、日本社会を対象としたデータである、約1500万円という数字をわれわれの感覚の基準としては参照したほうがよいかもしれません。

 

平成30年分の国税庁による給与階級別給与所得者数・構成比を参照すると、年収800万円超の層は総給与所得者数のうち10パーセント未満であり、1500万円以上となると、1.5パーセントに届かないような割合です。
この層に入ってくると、年収を比べようにも、平均的な集団の中では、比べる相手を探すのにも一苦労です。しばらくは、多くの人と比べて自分は経済的に恵まれている、と幸福感を得ることができても、ある程度の期間が経つと、参照する基準がありませんから次第に幸福感が感じられにくくなってきます。

自分はこれで本当にいいのか。今はいいかもしれないけれどもこの先、ちゃんとやっていけるのか。もしかしたら過大評価されているのではないのか。もしくはリップサービス。社会が変わっていったときに大丈夫なのか。
誰とも比べることができず、自信が持てない人は案外、高収入の人にも多いのです。自信なんて持ってしまったら、むしろ自分は終わるんじゃないか。

さらに言えば、年収が変化すると、つきあう相手も変わってきます。すると、またその層の中での競争と、比較が始まります。自分でない誰かが出世したり、収入が増えたりすることで不幸を感じてしまう地獄は、収入が増えたところで終わるものではありません。そのことに気づいてしまったとき、果てしない絶望を感じるのか、それとも達観して、淡々と自分のすべきことをしよう、と開き直ることができるのか。誰もが羨む立場になったときこそ、自分が試される瞬間がやってくるとも言えます。