「以前一緒に仕事をしたことがある方からの紹介がきっかけで、それを機会にまた別の企業からも社外取締役に声をかけていただいたんですよね」

Bさんは20代のころ、ある上場企業の子会社で社長を務めた経験があり、また自分自身でも会社を起業・経営した経験があります。今は明確に社外取締役としてのやりがいを感じ、さらに機会があれば兼任してみたいと話します。

社外取締役とは、社内の取締役とは異なり、独立した立場から経営を監督する役割を持った取締役のこと。上場企業が取り組むべき指針「コーポレートガバナンス・コード」でも、今年の改定で取締役のうち3分の1以上を社外取締役とする方針が明らかになる(プライム市場の場合)など、注目を集めるポジションです。

「実際にやってみて、社外取締役だからこそ果たせる役割があると強く感じます。社外の独立した役員だからこそ、より客観的に株主や従業員、顧客の立場に立ち、経営としてどうするべきかアドバイスできる。それが結果として会社を良くし、社会を良くすることにつながればこれほどうれしいことはありません」


「後輩女性の役に立ちたい」と話すのは冒頭にも登場したAさんです。大学卒業後、外資系企業に就職。海外勤務も経験しました。しかし、自身の英語力に限界を感じて帰国。ところが、一度は挫折を感じたはずの英語力がきっかけとなって、日英バイリンガルの司会の仕事を始めたところ、これが周囲から評価され、その仕事からの出会いがきっかけとなって、子ども服関連の事業を共同創業。昨年までその会社で取締役として事業を牽引してきました。

「正直言って、これまでの自身のキャリアを振り返ってみて順調なことは何一つなかったし、挫折もたくさん経験しました。それでもこれまでやってこれた。事業のほうはその領域では日本最大規模にまで成長させることができました。次は私が、悩みや迷いを抱える女性経営者をサポートする側にまわりたい」

 

ほかにも、「社内から女性が昇格して役員になるにはまだまだ5年も10年も時間がかかってしまう組織が多い。であれば、自分自身が社外取締役として役員の立場でかかわることで、女性のみなさんにとってのロールモデルになっていけたら」(50代)と話す女性も。

 

こうした女性役員を目指す女性たちは、「男性の3倍以上結果を出さないと認めてもらえないのに、昇進すると今度は『女だから(出世できた)』と言われてきた」(40代)など、社会にはびこる根強いジェンダーギャップに苦労してきた世代でもあります。

そんな彼女たちだからこそ、「役員を目指したい」という想いの奥底には、自身の経験やスキルを社会に役立てたいという考えにとどまらず、後輩世代の女性たちの励ましや勇気づけ、活躍の一助になればというシスターフッド(=女性同士の連帯)があり、お話しするたびに私はいつも感動しています。

このようにスキルや経験、想いのあふれる女性役員候補の女性たちは確実にいます。あとは登用するだけ。こうした女性たちが少しでも活躍機会を得て、日本企業の意思決定層がより多様化する--今年がそのきっかけの一年になることを強く願っています。
 

(※)東京商工リサーチ「2020年3月期決算上場企業2,240社 『女性役員比率』調査」より

前回記事「男性の生きづらさが解消されなければ、ジェンダーギャップはなくならない」はこちら>>

 
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