離婚を決めたら③「それでも味方は出来るだけ多く」


B子さんもTさんと同じく周囲の心ない意見に胸を痛めていましたが、その葛藤を解消する中で「自分も他の人に同じことをしていなかったか?」と思い立ったそう。

「最初は、なんで皆、こんなに無知なんだろうと憤りを感じていました。何も知らないくせによく無神経なことが言えるな、と。
でも、ふと自分は他の分野で人に対して『無神経なことを言っていないと言い切れるか?』と思ったんです」

例えば、マイノリティやそのご家族に対して、無知からくる無神経な言葉をかけていなかったか?

「知らず知らずのうちに差別発言をしていなかったか。世間体というのは多数派の意見ですから、どうしたって少数派に属する人は世間からの無理解を経験します。
自分自身の葛藤に関しては周囲に深い理解を求めていましたが、それを実現するためには、自分自身も他のマイノリティに対して深く理解することも必要なんだなと思いました」

B子さんは離婚するまでマイノリティとなった経験がなく、学業や仕事も順風満帆、いわゆる多数派からのお墨付きがもらえるような人生を送ってこられたそう。
その中でもしかしたら、自分が気がつかないうちに様々な人に理解のない発言をしていたかもしれないと反省。

強い立場にいる場合はその特権に気がつきにくいと言いますが、まさにその違いを体感されたそうです。

「そこから意識が変わり、色々な社会問題にも目を向けるようになりました。
そうすると、今まで見えてこなかったものが見えるようになったのです。理解してほしいためにはどんな伝え方が有効かを本気で考えるようになりました」

 

Bさんはそこから、周囲に自分の立場を理解してもらうために様々なアプローチをしたそうです。
自分の状況を訴えるときも「どうしたら最速で自分の状況が理解され、かつ応援されるか」に知恵を絞り、出来るだけ冷静に家族や職場の理解を取り付けていったそう。

ちなみに、個人的にはBさんレベルの行動が出来る人は稀だと思いますし、言語化能力の他にも様々なスキルが求められるので、辛い現実を処理している時に無理にそんな風に振舞わなくてもいいと思います。

けれど、現在「周囲の無理解が辛い」と悩んでいる方に、「あなたは一人で戦っているわけじゃないんだよ」と言うのをお伝えしたいなと思いました。

 


今回の離活マニュアル
「離婚を決めた後の心の持ちよう」


多数派同調バイアスという言葉があります。
自分自身の行動に自信が持てない時、迷った時、周囲の人と同じ行動をとることが安全だと判断する心理的傾向のことだそうです。

その傾向の裏には、「多くの人がそう考えたり行動したりするのであればそれが正しいのだろう」と判断する認知バイアスがあり、災害時に避難が必要なのに「周囲の人がその場を離れなかったり危険を回避する行動を取らないから」、と逃げ遅れてしまう恐れもあるのだとか。

大多数の人とは違う行動をとるとき、違う生き方を余儀なくされたとき。
偏見や無理解に嘆くこともあるかと思います。でも、心配なのは周囲に同調しようとするあまり「避難が必要なのにその場を離れずに危険を回避する行動を取らない」ことかもしれない、と思います。

状況をよく見極めて、ご自身の選択に確信が持てるようになると良いですよね。
 

構成/片岡千晶(編集部)

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