フランス人の浮気理由TOP3は、パートナーとの関係の悪化、パートナー同士の関心の欠如、を抑え「相手の肉体的魅力」が堂々の一位という。

――なんだかんだいっても、そこ大切だよね。

不倫への道は、いろいろな理由や要素が混ざっているだろう。だけど相手に惹かれて肉体的関係を持つというのは、最後は原始的な「魅力」の有無がものをいうのではないか。

私だって武臣が、もし啓介みたいに体型も身なりも気にしない冴えない中年男になっていたら、ホテルまで共にしたか正直わからない。

逆にいえば、私も「女性」であろうと気を付けるようになった。

チーズやバター、生クリーム。乳製品天国のスーパーで大好物に手招きされても、高カロリーの食事を避け、身体を引き締めようとエクササイズも始めた。結婚すると「女性」意識が緩むとよく聞くけれど、それにやっと気付けたのだ。

やっぱり不倫も、悪いことばかりじゃない……

 

「もしソフィの不倫がバレたり、彼が不倫してたってことになったら、どうするの?」

自分の過ちは隠したまま踏み込んだ質問をすると、ソフィは緩慢に首を振った。

 

「わからないよ、そんなの。許してほしいけど、許せないと思う。フランスは結婚するカップルが減って、事実婚が増えてるのは知ってるでしょ? 結婚しても二組に一組近くは別れるっていうんだから、それもわかるよね。離婚するには必ず弁護士を立てなきゃいけないし、時間もお金もかかって面倒くさいのよ。離婚原因で一番多いのは浮気っていうし」
「やっぱり『浮気はダメ』っていうのは、フランスでも同じなんだね」
「当たり前でしょ、結婚するっていうのは、その人だけに愛を誓うってことなんだから。フランスならどんな恋愛もOKって話じゃないのよ」
「なんとなく、サルトルとボーヴォワールみたいな自由恋愛がフランスのイメージかも」
「そんなの理想論。ボーヴォワールだって彼を別に作ったりしたけど、サルトルの若い恋人に嫉妬して苦しんで、結局無理してたんだから」

私の言いたい放題に張り合うように、ソフィはぴんと背筋を伸ばして反撃に出た。

「そういう日本はどうなの? 他人の浮気すら許せないなんて、皆マジメに忠誠を守ってるってわけ?」
「どうかな」

私は苦笑する。立場が逆になって、いかに意地悪な質問をしていたかと思い知る。

「あぁ、でも日本は離婚も紙一枚でOKっていう簡単な手続きなんだっけ。浮気がバレたら、パパッと離婚されちゃうからリスキーなの?」
「というより、日本では不倫も離婚も世間から良い目で見られないし、生活が崩れるのが怖くて我慢する人が多いんじゃないかな」
「ふーん? それもよくわかんないけどね」

ソフィが大きなため息を吐き、私もつられて息を吐いてしまった。

パリの街角のリアル
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NEXT:8月15日(日)更新

いよいよ明後日、武臣と会える。葉子は体調不良のソフィのピンチヒッターとしてホテルの仕事を手伝うことに。


撮影・文/パリュスあや子


第1回「フランスと日本の不倫の代償」>>
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第3回「明日の夜も空いてるかな?」>>

 
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