ホテルはすぐ近くだった。

 

ドアからベッドまで倒れ込めるよう動線が片付けられている部屋で、私たちはお互いを壁にぶつけあうようにして嵐のようなキスを交わし、むしりあうようにして服を脱いだ。

武臣はうっすら胸毛を生やしている。男性経験自体多くはないけれど、私は武臣以外に胸毛の男を知らない。

ふんわりうずまく胸毛を乱暴に引きちぎると、武臣は呻いた。そして何とも言えずに厭らしく、口の両端をにぃっと歪めた。

初めて本当に、武臣が笑った――

そう思った次の瞬間、後ろ向きにされ、両手を片手で摑まれた。そのまま壁に手を付き、前戯もなく荒々しく後ろから突かれる。

私もまた呻いた。本当に痛い。

でも武臣はその声を官能的に捉えているようで、どんどん激しくなる。私は目を見開き、自分の呼吸を落ち着けながら、濡れろと祈っていた。痛い。

パーンッ!

雷に打たれたような衝撃が走り、息を忘れた。

パーンッ!

お尻が痛みでビリビリして、頭はスーッと冴えていった。恐ろしいほど冷静になり、心が冷たくなる。

「止めて」

私の言葉がもう届かないらしい武臣を押しのけ、遠くに放りなげられた下着を探しに行く。私は尻を丸出しにして、一体なにをしているんだろう。

ようやく事態が急変したことを悟った武臣は、それでも理解できないというように、そそり立つものを隠しもせず必死に言葉をかけてきた。

でも、なんでだろう。あんなにときめいた優しい言葉も甘いささやきも、一瞬にして空虚でグロテスクな冗談に変わってしまった。

私はかき集めた服を素早く身に着けると部屋を出た。

「ごめん、さよなら」