「好きだから一緒にいる」という、ただひとつの理由
弁護士への相談を経て、そのことを夫にも伝えたレワ子さん。「事実婚には離婚なんてそもそもない」「親権だってもう決まっている」と夫にも言われ、不倫の怒りを夫にぶつけるしかできませんでした。しかし、最終的には夫が謝罪。事実上の離婚はせず、「事実婚」夫婦を続けながら、子供たちと一緒に4人で暮らしていく道を選びます。そう決めた理由は、やはり夫のことが「好きだったから」だと、レワ子さんは振り返ります。
不思議なことだったが、ひと騒動を終えた頃からレワ子と夫のセックスの回数が増えた。夫のことが好きだからセックスができるという気持ちだった。
そういえば事実婚をするとレワ子が言ったとき、大学時代の友人から言われた。
「えーっ! もし旦那のこと好きじゃなくなったら、どうするの? それだけで終わっちゃうよ」
たしかにそうかもしれない。
事実婚だから、レワ子と夫を結ぶ法律は何もない。
ということは、レワ子と夫が一緒にいる理由はただひとつ。好きだからということだけだ。
長男も次男も、夫を男のモデルにして育つのだろうか。自分のような女と付き合ってほしいとは思わないが、夫のような男に育てば誇らしいと、レワ子は思っている。
「どんな結婚を選ぶか」までの道のりも人それぞれなら、「離婚を選ぶ」「離婚を選ばない」までの道のりも、それぞれの物語があるとわかるレワ子さんの体験記。事実婚や週末婚など、夫婦のかたちも多様化する現代では、「後悔しない選択」のためにどんなことが大切なのか。著者の南さんは、あとがきでこのように綴っています。
「僕がいつも思うのは、自分は何をしたかったのか、自分はなぜ夫のことを嫌だと思うようになったのか、自分がこの先の人生に求めているのは何なのか、何が整っていることを自分は幸せだと思っているのか、といった具合に自分のことを分析するのが上手な人のほうが、離婚の暗闇から早く抜け出せるということです」
著者プロフィール
南和行(みなみ・かずゆき)さん:1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に二人で弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』(監督:戸田ひかる)は、2017年の第30 回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞し、2018 年全国上映で好評を博す。タレント弁護士として、テレビ番組へのコメンテーター出演やドラマ・映画の監修なども手掛ける。
【なんもり法律事務所】https://www.nanmori-law.jp/
【Twitter】@minami_kazuyuki
【Instagram】@minami_kazuyuki
『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』
著者:南 和行 集英社 1650円(税込)
「離婚する」選択も「離婚しない」選択も、「法律」を知っていれば自分が納得する答えが出せる! モラハラ夫に、セックスレス不倫、事実婚夫婦やパートナー宣言した同性カップルなど……パートナーへの様々な悩みを抱える19人の女性が登場。弁護士である著者の知識と経験を元に、女性たちが決断に至るまでの流れを詳細に解説します。 集英社のウェブサイト「よみタイ」の人気連載「離婚さんいらっしゃい」が、タイトルを新たに待望の書籍化。
構成/金澤英恵
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