自己の存在に関する「7つ」の苦悩とは

 

重い病気になると、自分のことを自分で決めて行動する「自律」が損なわれます。これが、「なぜ人の世話になってこのように生きねばならないのか」という苦悩と結びつくことは想像に難くありません。

 

死を意識するようになると、これまでの人生は良かったのか、あるいは正しかったのか、そして死後にはどのようになるのか、罰を受けるような来世が待っているようなことはあるのか、などと様々なことを考え思い悩むということは、個人差はあるものの、しばしば現場で認められるものです。

先述の論文では、このような苦悩が7つにまとめられています。

(1)意味への問い
「これじゃ生きていても意味がない」などと人生の意味や目的を失って苦悩する。生きる意味や存在の価値、苦難の意味に対する問い。

(2)死に対する不安
「死そのものへの不安」「死への過程の不安」「死後の不安」などの死に関連する不安。

(3)尊厳の喪失
病状の悪化に伴う身体機能の低下で、特に排泄が自立できなくなるなど、日常生活行動等を他者に依存しなければならないことで、自尊心の低下につながり、尊厳が喪失することの苦悩。

(4)罪責意識
「役割を果たせない申し訳なさ」「他者の迷惑になる」「人生への後悔」「罪への報いとして病になった」などの苦悩。

(5)現実の自己への悲嘆
自分が思い描く姿と現実ギャップへの苦悩や、希望の喪失。

(6)関係性の喪失
他者との親密な関係性を続けることが困難になることによる孤独や、死による別れの苦悩。

(7)超越的存在への希求
神や宗教など、これまであまり関心を持つことがなかった人間や現世を超越した世界に対する希求。

確かにこれらは、死が迫っている方や非常に重い病気の方から、しばしば聞かれる苦悩です。そして身体の苦痛や一部の精神的な苦痛と比べて、薬剤などで緩和するのが難しい苦痛でもあります。