この給付金が決定されたのは2020年4月のことであり、1回目の緊急事態宣言が発令された時期にあたります。当時は多くの国民がコロナという未知のウイルスに計り知れない恐怖を感じており、一部では連鎖倒産や生活困窮者の急増などパニックが起こるリスクも指摘されていました。

写真:森田直樹/アフロ

こうした状況においては、誰がどこでどのように困窮しているのか詳細に調査する時間はありませんから、一律にお金を配ることには大きな意味があります。事業者が従業員に休業要請する場合、本来、賃金を支払う必要がありますが、その余裕がない事業者は少なくありません。給付金があれば、事業者側は従業員に対して「1~2カ月の間はそのお金で凌いで欲しい」とお願いができますから、パニック的な倒産や廃業を回避できます。実際、この給付金によって多くの零細企業が倒産を免れました。当然ですが、人によってコロナの影響は様々ですから、生活に余裕のある人はそのお金を貯蓄に回すことも当初から想定済みです。

 

貯蓄もムダにはなっていません。政府は給付金の支給後、コロナ対策を前提に50兆円という大規模な国債増発に踏み切っていますから、貯蓄に回ったお金は最終的には国債に充当され、コロナ対策に使われたと判断してよいでしょう。与党の一部から、給付金の多くが貯蓄に回ったので景気浮揚効果がなかったという批判が出ましたが、給付金という施策の本質を考えると、これも的外れな議論であることがお分かりいただけると思います(もし景気対策を実施したかったのであれば、そもそも給付金を配ること自体が無意味です)。

では、今回の給付金が困窮者対策であると仮定した場合、18歳以下に一律10万円(うち5万円はクーポン)支給というのは妥当なのでしょうか。この議論についても目的がハッキリしていれば、おのずと結論が出てくると思います。

今は、昨年のようにコロナ危機で社会が大混乱している状況ではありませんし、子どもの支援に的を絞った内容ですから、高額所得世帯にまで給付金を配る意義が薄いことは明白です。やはり所得制限を入れた方が合理的でしょう。

困窮者対策ということであれば、子どもがいない世帯も多いですから、子どもだけを対象としたものでよいのかという指摘が出てくるのはむしろ当然のことだと思います。また、景気対策が主目的ではありませんから、半額をクーポンにするということにもあまり意味がありません。


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