あなたはゴミ箱に用を足してしまったことはありますか? 愛用しているセーターを着ようとして、どうしても着られずに困ったことは?
きっと、どちらもないでしょう。私たちは、必要なら当たり前のようにトイレに行き、服も難なく着ることができます。
でも、認知症の人は「トイレで用を足す」「服を着る」という、私たちにとっては当たり前の日常行動ができなくなることがあります。なぜ、そうなってしまうのでしょうか。病気によって脳内で、ある「つまづき」が起きやすくなっていることが原因でした。
介護現場で多くのお年寄りと接してきた渡辺哲弘さん(介護セミナー講師)が、そのメカニズムを初めての人にわかりやすく説明してくれています。彼の著書『認知症の人は何を考えているのか?』から抜粋してご紹介します。
「不可解な行動」は環境に適応しようとした結果
クリスティーン・ブライデンさんという方をご存じでしょうか。
彼女は、46歳でアルツハイマー型認知症と診断され、認知症がまだ「痴呆」と呼ばれていたときに、当事者として公の場で初めて、自身の病気について語った方です。このブライデンさんが、2003年に放映されたNHKのテレビ番組『クローズアップ 現代〜痴ほうの人・心の世界を語る〜』で、 認知症の人の不可解な行動=「BPSD」について次のように説明しています。
「介護者にとっての問題行動は、認知症の人にとっては適応行動である」
「私たち(認知症の人)は環境に適応しようとしている。その環境は、まわりがつくりだしたものである」
「痴呆」を認知症と言い換えて要約しました。少し補足すると、この「まわり」というの は、〝認知症ではない人たち〟のことも含めた周辺の環境全部のことです。 はたして、ブライデンさんは何を言いたいのでしょうか? 私なりにさらに言い換えると、次のようになります。
認知症の人は、まわりに合わせて行動しようとしています。
でも、うまくいかないだけなのです。
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