自分もヒーローの一員として、ヘマはできない


ーー2019年に「ウルトラマンタイガ」で主演した経験は、自分の中にどう生かされていますか?

「やっぱり大きかったです。成長できたと思うことはないんですけど、『あのときこうしておけばよかったな』という反省が、今生きていたりはします。あの頃の自分に『現場でもっと貪欲に、監督やプロデューサーに聞けよ』って言いたいですし。そう思ったからこそ、今はなりふり構わず聞くようにしています」

ーー親子ファンの存在は感じますか?

「特にイベントで感じます。土日や年末にイベントがあったんですけど、そこに来てくださった作品のファンの方から、本当に元気をもらいました。SNSへの投稿や事務所に届く手紙から作品への反応をいただくことはありましたが、ステージに立つとそれ以上の熱量みたいなものを感じられるんです。これぞヒーローの偉大さというか、ヒーローになった醍醐味だと思いました。それと同時に、歴代のヒーローの一員に自分がなれたんだということを実感して、『これはヘマできないな』と。ウルトラマンは、日本では知らない人がいないくらいの存在なので、責任感がすごく増しました」

 

 

ーー具体的な行動に変化はありますか? 例えば、車が一台も走っていないのであれば、大人は自己責任で、赤信号でも横断歩道を渡ったりしますよね。でも、その場に小さい子がいるときは、どんなに車が来なかろうが信号無視をしない、とか。

 

「たしかに、『当たり前のことを当たり前に』というのは、心がけるようになりました。もうそれが癖になったので、何も苦ではないんですけど。『ウルトラマンタイガ』をやったおかげですね。今後『成長したことは?』と聞かれたら、これからは『当たり前のことを当たり前にできるようになりました』と答えたいと思います。学びました(笑)」

 


目標は新人賞。自信の核になるものを増やしたい
 

ーー『明け方の若者たち』は、〈僕〉と尚人が今の井上さんとほぼ同じ、25〜26歳のときにエンディングを迎えます。尚人はあるアクションを起こし、寝る時間もプライベートも犠牲にし、仕事だけに打ち込んだ状態でラストシーンの〈明け方〉を迎えますが、同世代としてどう思いましたか?

「尚人の気持ちはすごくわかりました。脚本を読んで、眠る時間がなくてどれだけ見た目がボロボロになっても、楽しいし、やりたいことがいっぱい見えているから、夢を語っている瞬間は目だけは光っているイメージがありました。ラストシーンは撮影していてもとにかく楽しかったです。今まで演じてきた役のなかで、尚人は一、二を争うくらい、共感できる部分が多くて、内面の役作りという部分でいうと、一番自分と重なる部分があったと思います。尚人みたいにキザな言葉は言えないんですけど(笑)。匠海くんも『今回あんま芝居してなかった』と言っていたので、〈匠海くんと僕〉に近いかもしれません。でも、『僕は尚人ほど強くないな』と思うところもあるので、尚人に背中を押される感覚もありました」

ーータイトル通り、この映画自体が見た人にとって夜明けや希望になる作品だと思います。井上さんは今、どんな目標に向かって走っていますか?

「アクション映画に出たいですし、アクションシーンのある刑事役をやりたいです。他にもたくさんやりたいことはありますが、一番近いところでの目標は、映画で新人賞を獲ることです。獲ったからどうという訳ではないですけど、この仕事をやっていく上で、自信の核になるものをどんどん増やしていきたいので、それが今僕にとっては映画の新人賞。獲るまでがんばります!」
 

井上祐貴 Yuki Inoue
1996年生まれ、広島県出身。第42回ホリプロタレントスカウトキャラバンにて審査員特別賞を受賞、2018年にブロードウェイミュージカル「ピーターパン」で俳優デビュー。2019年に特撮ドラマ「ウルトラマンタイガ」で主人公・工藤ヒロユキ役を演じ注目を集める。以降、数々の映画・ドラマに出演。2021年公開の映画は優希美青とのW主演映画「NO CALL NO LIFE」、主演映画「Bittersand」に続き、「明け方の若者たち」で3本目となる。
 

 

<作品紹介>
映画『明け方の若者たち』

 

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」付き合いで参加した学生最後の飲み会。そこで出会った〈彼女〉からの一通のショートメッセージから、〈僕〉の人生が動き始めるーー。理想と現実の間でもがく若者たちの青春と葛藤をリアルに描きベストセラーとなった、人気ライター・カツセマサヒコの小説デビュー作を実写映画化。主人公の〈僕〉を北村匠海、主人公が一目惚れする〈彼女〉を黒島結菜が演じる。12月31日(金)より全国ロードショー。

撮影/塚田亮平
取材・文/須永貴子
構成/山崎 恵