初めてメイクをした時の気持ちを覚えていますか? ほんの少し塗るだけで、自分の顔がこんなに変わって見えるんだという驚きや、あれ、ちょっと自分ってキレイなんじゃない? というときめき。自信と可能性を感じさせてくれる、それが「メイクの力」。

2月10日に発売され、Amazonコミック売れ筋ランキング1位、そしてTwitterでの試し読みが10万いいね! もついたという注目作『僕はメイクしてみることにした』は、38歳にして初めて「メイクの力」を感じた一人の男性のストーリーです。

前田一朗は、お菓子メーカーに勤務する独身・38歳・彼女いない歴10年のサラリーマン。職場で、朝からお疲れフェイスを指摘されてしまう。確かに最近、どんなに寝ても疲れが取れない。

 


こんなもんだろ
そう こんなもんだ こんなもん

と思いつつ、帰宅するとソファーでゴロゴロしながら晩酌して、寝落ち。
朝、改めて鏡を見ると、ひどい顔をしている自分がそこにいました。

 

顔色の悪さ、目の下の存在感強すぎるクマ、頬の乾燥と額のテカリ、カピカピの唇にむくみ⋯⋯。顔だけではなかった。体もよく見ると、20代の頃とは変わり果てていました。

 

「前田って結構いい身体してるよな」とうらやましがられ、「なんでか子どもの頃から食っても太らないんだよ」と余裕で言っていたのも昔、今ではポヨンとたるんだ下っ腹がそこにあったのでした。

 


このままじゃダメだ

とはいえどうしたらいいのか。一朗はわからないなりに、元カノがこういうのつけてたな、とドラッグストアで化粧水を見つけます。ですが、女性向けの化粧品コーナー、そこには、彼の未知の世界が広がっていました。

 

同じ商品なのになんだそれ。一朗は、困惑します。
「さっぱり」と「しっとり」、どっちが自分の肌に合っているのかわからない。これまで肌のことなんて考えたこともなかったから。

38年間生きてきたのに
俺自身のことをちっとも知らない

 

この日、「とりあえず」買った化粧水を雑にバシャバシャ使ってみると、翌日、肌がちょっとモチモチでいい感じに。違いを感じた一朗は、数日後、洗顔料も買ってみようとドラッグストアに再び訪れます。

フォームや石鹸、いろんなタイプが並ぶ中、どれを選べばいいのか。何がいいのかわからなくなった一郎は「とりあえず」一つの商品を手に取ります。すると、女性の声が。

それ クレイマスクですよ

びっくりした一郎は、声の主とぶつかってしまう。
謝ると「洗顔料を探しているんですよね」と言われます。

 

洗顔料を探してるのが声に出てたのか、とヒエッとなる一郎に、彼女は問いかけます。
「あなたの肌はどんなタイプです?」
「乾燥しやすい? 油分多め? 混合肌?」

「すみません、わからないです」と一朗が言うと、
「自分のことなのに?」と、彼女は不思議そうな顔をします。

彼が以前使っていた男性用洗顔料をヒアリングし、オススメのものを紹介する彼女に、一朗は心のうちを話します。

これまで肌の手入れを全然してこなかったこと、先日初めて化粧水を使ったら、翌朝ちょっと変わっていてものすごくびっくりしたこと。
そして、やったらちゃんと肌は応えてくれるんだ、と感じたこと。

この言葉に、何かを感じた彼女。

 

彼女の名は、タマちゃん。コスメが大好きな女子でした。
この一件から、一朗は彼女を「師匠」と呼び、メンズコスメを探求する日々がはじまるのでした。

本作では、メンズコスメの二つの流れを見ることができます。
一つは、従来からの「男性用ケア商品」。もう一つは最新の「メンズコスメ」。

買った洗顔料を使ってみてもしっくりこないと感じていた一朗。彼はずっと
スッキリ・サッパリ=清潔
と思っていたのです。それを聞いたタマちゃんは言います。
「ドラッグストアに売ってる男性ケア商品がなんで同じようなデザインなのかちょっとわかった気がします」
色は黒かグレー、無骨で無難で実用重視なデザイン。従来の男性用スキンケア商品は、「美容」ではなく、食器洗いや掃除用品に近いものなのかもしれませんね。

一方、タマちゃんに促されて足を踏み入れた、最新メンズコスメの世界は日々進化しているのでした。

ファンデーションのブラシがヒゲやもみあげの間にも入るような形状だったり、パウダーのコンパクトが、スーツのポケットに入れやすいように縦に開く仕組みになっていたりと、男性の肌質やライフスタイルに合わせた工夫がされているのに驚き!
これ、女性用コスメでも採用してほしいな〜、なんて思うアイテムもありました。

その後、一朗は、ベースメイクにもチャレンジしていきます。
でも、はじめから上手に塗れるわけがなく、あれこれ試すうち、下地とファンデの組み合わせや塗り方の「正解」がわからなくなった一朗に、タマちゃんは、

自分がどこまでやりたいか、どんな顔になりたいのか

と言います。

作者の糸井のぞさんがTwitterで本作の試し読みを公開すると、早速たくさんのコメントも寄せられました。それらの一部をご紹介します。

・「初めてスキンケアをした時の感動を思い出した」
・「さぼっていた美容をちゃんとやろうと思った」

当たり前のようにこなしている日々のスキンケアやメイクも、初めての時は一朗のように感動したはず!

・「夫や彼氏に読ませたい」

一朗のように美容にまったく関心のないパターンだけでなく、美容に目覚めはじめている夫や彼氏に読ませたい、という人も多く見られました。

・「美容の重要性はわかったけれど、やはり前時代的な『男が化粧するなんて』という考えが抜けきれない」


やれば変わるだろうとわかっていても、男性がメイクすることにはまだまだ抵抗がある人もいるんですね。

いろんな意見がありながらも、メンズ美容は、今、多くの人が思わず反応してしまうトピックなのだと思いました。

他人が気づかなくても、顔色がいい自分やガサガサしてない唇を見ると気分がよくなる。
一朗にとっての「メイクの力」は、自分の気持ちをあげるためのもの。

でも実は「メイクは自分のためにするもの」「男女を問わずメイクするべき」と断定してこないのが本作の魅力。
「取引先に好印象を与えて仕事をもらえたり、誰かにモテるためにメイクをしたっていい」し、「メイクをしない選択肢だってあっていい」というメッセージも、周りの登場人物を通じて語られるのです。

それでも、メイクをする理由とは?
一朗はメイクをすることで、こんな自分はダメだと自分を否定したり、もう年だからしかたないとあきらめるのをやめました。そしてスキンケアやメイクをやった分だけ良くなっている自分を鏡で見ると嬉しくなり、今度は何をしようかな? と思うようになりました。

そう、メイクの効能とは「自分で自分を肯定できるようになる」こと。
メイクをすることで男女問わず、今日の自分っていい感じ! と鏡に映る自分を褒めてあげたり、もっと自分って良くなるんじゃない? とのびしろを感じられるのです。 

自分で自分を肯定してあげるために。

一番手軽にはじめられて、効果も抜群な方法、それがメイクなのではないでしょうか?
 

 


【漫画】『僕はメイクしてみることにした』第1話を試し読み!
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『僕はメイクしてみることにした』
糸井 のぞ(著)   鎌塚 亮(企画・原案)

彼女いない歴10年の38歳・前田一朗はある日、疲れきった自分の顔とたるみ切った体にショックを受け、スキンケアを探しに薬局へ行く。そこで出会ったコスメ大好き女子のタマちゃんを「師匠」と呼び、メイクをはじめてみることに!


作者プロフィール

糸井のぞ

『おじさんと野獣』(新書館)『真昼のポルボロン』(講談社)『グレーとブルーのあいまで』(プランタン出版)『最果てから、徒歩5分』(講談社)などが代表作。現在は、『僕はメイクしてみることにした』をVOCEウェブサイト(講談社)で連載中。
Twitterアカウント:@amazake_chan


原案・鎌塚亮
セルフケアをテーマにエッセイを執筆。原案をつとめた『僕はメイクしてみることにした』がVOCEウェブサイト(講談社)にて連載、書籍化。
Twitterアカウント:@ryokmtk

 



©️糸井のぞ・鎌塚亮/講談社
構成/大槻由実子

 

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