父の死を母に告げられず……
自責の念をやわらげてくれたのは


主治医の判断もあり、しばらくの間は、父が亡くなったことは母には伏せられました。一人っ子の如月さんは、母と悲しみや思い出を共有することができず、一人で抱えるにはあまりにも重すぎるものを背負うことになります。父を一人で死なせてしまったという自責の念もありました。一部の友人には心の内を受け止めてもらったものの、それでも心にのしかかる負担は大きかったといいます。

父の葬儀から一ヶ月後、そんな心の重荷をメディアプラットフォーム「note」に一気に書いた如月さん。もし数人でも読んでくれたら、自分の気持ちも少しでも軽くなるのではないかと思ったからです。すると、一晩で数万件のアクセスがあり、「自分も同じような経験をした」といったコメントがたくさん書き込まれました。このことがWEBメディア「日経xwoman ARIA」での連載や書籍化につながりました。

書籍には、誰もいなくなった家の片付け、残された4匹の老猫の世話、認知症の母の遠距離介護などについて、如月さんの体験がリアルに綴られています。実家では長年、猫を飼っていて、4匹の猫も保護猫や、人から飼ってと頼まれた猫たち。両親が70歳になった頃に自分たちの年齢を考えて、新しい猫を迎え入れることをやめていたのですが、結局は猫の方が長く生きることになってしまいました。

 

「父に体調が悪くなったら我慢せず、必ず病院に行くようにと伝えた時、『僕がもし入院したらこの猫たちはどうなるの?』と言っていたので、もしかしたら、猫たちがいたから病院に行かなかったのかもしれないと思いました。でも、私にも自分の仕事や東京での生活があり、しかも猫を2匹飼っていたので、『もしお父さんが入院しても、私が実家に帰ってリモートで仕事をしながら家のことをやるから大丈夫』とは言えなかったんです」

 

4匹の猫の引き取り手を探したものの、老猫ということで見つからず、結局は如月さんが東京に連れてくることを決意。今は先住猫2匹も理解を示してくれたのか、同じ部屋で過ごせるようになり、穏やかに暮らしているとのこと。