美容医療はアラフォー一般人には敷居が高い?


「ねえねえ、夏美はなんかやってる? エステとか、レーザーとか。なんでこんなに艶々してるの? 私より二つ年上だよね?」

翌日、約束の時間にビストロに現れた友人でベテラン美容ライターの夏美に、里香は立て続けに質問を浴びせた。

「まあ、やってるもやってないも、それが仕事だからねえ」

余裕を漂わせ、運ばれてきたグラスワインを口にする夏美を見て、里香は身を乗り出す。

「基礎化粧品とかじゃなくて、もうプチ整形もトライ済み?」

「エステとかエンダモロジーとかは定期的に通ってるね。あとはレーザーでシミ取ったり、ダーマペンしたりっていう程度ねえ。本格的な切った貼った注入したは、してないよ。そこまでしても私の顔なんて誰も見ちゃいないかと」

里香は唖然として、まるでノーメイクのように見える里香の素肌を見た。考えてみれば44の夏美が「ノーメークのように見える」ということは、陰で非常なる努力をしているに違いないのだ。すっぴん風の顔に、オシャレな黒縁のメガネ、こなれた服装があまりにもナチュラルで、これまで影の努力について訊いたことがなかった。

 

「私、オーガニックの化粧水に乳液に美容液塗って、なるべくミネラル素材のファンデーションでOKみたいな感じでそれ以外一切手をかけなかったから、がくんと老けちゃったような気がするの。しまったなあ、なまじ肌が丈夫だったから、それにかまけて努力を怠ったよ……」

 

「え、いいんじゃない? 基本スタンス、それで合ってるでしょ。里香は童顔だし、まあ肌の質感的に張りがある分、歳とるとたるみが目立つタイプではあるわね」

「ぎゃー! それ、それを早く忠告して!! 放置しちゃったじゃないの。私、美容皮膚科に行って相談してくる! 良心的な価格で腕が良くて近所のクリニック紹介して夏美!」

里香の有無を言わさぬ勢いに、夏美は何事かを言いかけたが諦めたようにため息をつくと、スマホを取り出した。

「そんな都合のいいクリニックあるか! と言いたいとこだけど、里香、運がいいわ。この前取材で言ったクリニック、里香の近所で素敵な先生だったよ」

さっそくWEBで初診予約をいれた里香は、その夜、少しでもいい状態を先生に見せようと謎に張り切り、22時に夫の慶介の帰宅を待たずに布団に入った。