かかりつけ医を持つメリット


かかりつけ医とは、健康に関することを何でも相談できる、身近で頼りになる医師のこと。「かかりつけ医」は一般名称で、「何度か通った病院」という程度の曖昧なものです。近年、かかりつけ医を持つことが推奨されていますが、その背景には高齢人口増加に伴う医療費の増加が関係しています。医療の効率化を図るため、最初はかかりつけ医が診察し、専門的な治療が必要と判断された時には紹介状とともに適切な専門医療機関につなぎます。専門医療機関の治療後はかかりつけ医がサポートするので、治療が途切れる心配はありません。

かかりつけ医には、地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力が求められます。専門分野にかかわらず、さまざまな健康問題について相談でき、的確な診断をしてくれるのがかかりつけ医。介護の面でも、要介護認定を申請する際に必要な「主治医意見書」の記載をはじめ、ケアマネジャーや地域包括支援センターとの連携もスムーズに行ってくれます。このように、かかりつけ医を持つメリットはたくさんあります。


紹介状なしで大病院を受診すると特別料金がかかる!


地域にはさまざまな医療機関があります。たとえば診療所は軽度の風邪やケガなどを診療し、病院は重度の病気やケガの治療のために高度で専門的な医療を提供します。このように、それぞれの医療機関が特徴を活かして異なる機能を担うことを「医療の機能分化」と言います。

国はこれを推進するため、紹介状なしで大病院を受診すると、初診料のほかに特別料金を上乗せする仕組みを導入しています。改定のたびにその範囲は広がっており、2022年10月1日から施行される定額負担の見直しでは、紹介状なしで大病院を受診すると、初診は最低でも7000円~、再診は3000円~の特別料金がかかることが決まっています(金額は病院により異なる)。

 

※地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関以外の一般病床200床以上の病院については、選定療養として特別料金を徴収されることもあります。

なお、特別料金には健康保険が適用されないため、全額自己負担になります。このようなことから、特別な事情がない限りはいきなり大病院を受診せず、かかりつけ医から必要に応じて病院を紹介してもらうのがベスト。そうしないと余計な医療費がかかってしまいます。

 


高齢者のかかりつけ医は内科か整形外科がオススメ


どの診療科の医師でもかかりつけ医になれますし、かかりつけ医を1人に絞る必要もありません。ただ、靖子さんやお父さんのように、そもそも何を決め手にかかりつけ医を選べば良いのかわからないという方もいるかもしれません。そこで1つ、高齢の方であれば、高血圧症や糖尿病、肺炎や認知症など、幅広く診察できる内科医を選ぶことをお勧めします。内科には、消化器系、循環器系、心療内科など、それぞれの専門分野があります。新たにかかりつけ医を探す時は、特に不安のある病状を専門にしている内科医を探すと良いかもしれません。

高齢者の中には、膝や腰の痛みがあって長年整形外科に通院している方も多くいます。内科的なことに精通している整形外科医も多いので、そのような方はその医師をかかりつけ医にしても良いのではないでしょうか。

引っ越して間もない時などは、地域の医師会に相談するのも1つの手。参考までに、かかりつけ医の探し方、選び方のポイントを挙げてみます。

 


高齢になったら「かかりつけ医」から「かかりつけ病院」へ


高齢者の場合は、医療と介護の連携が不可欠なため、地域医療や保健、福祉を担う、かかりつけ医の存在が重要視されています。加齢とともに、脳血管疾患、肺炎、認知症、転倒骨折などを起こしてしまうため、内科、整形外科、外科など、複数の診療科に継続的にかかる頻度も増加します。そのため、この3つの診療科を備えた「地域密着の病床200床未満の入院設備のある病院」を「かかりつけ病院」とすることも検討してみてください。同じ病院であれば、科をまたぐ診察でも1日で済ませることができますし、入院設備があれば急な入院も慌てません。また、200床未満であれば選定療養費の心配もいりません。

高齢者は体が弱くなることも想定して、本人や家族が負担なく通える距離にあることも重要な判断材料となります。提携先として、専門科のある病院や診療所、訪問看護、訪問介護の施設名などを具体的に挙げていると、さらに安心できます。また、介護と医療の連携による在宅医療の充実に向けた体制も見逃せません。医師のほか、看護師、理学・作業・言語療法士、薬剤師など、さまざまな医療専門職が患者宅に訪問できる体制であるかどうかも確認しておきましょう。

 

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写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


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