こうして元サヤに戻ったアキコさん夫婦ですが、しかし円満に仲直り・元通りになったとは言えない状態だと言います。

「別居してよかった。でも同時に離婚もしなくてよかったと思います。ただ、1年以上も別居した後では、お互いに神経過敏になっているし、相変わらずちょっとしたことでピリッとした空気になります。

でもそんな時、娘が仲裁に入るようになりました。『今日はパパがママに謝って』『ママ、言い過ぎだよ?』とか……娘が夫婦喧嘩に忖度せずにフェアな発言をすることに驚かされます。子どもに気を遣わせるようになったのは申し訳ないですが……」

またアキコさんは、別居解消後に専業主婦を辞め、仕事を始めることにしました。以前編集プロダクションで働いていた経歴を活かして、今はフリーライターとして活動しています。

「離婚を考えていたとき、自分が専業主婦であることが1番の気がかりでした。離婚はしなくても、やはり社会との繋がりや少しでも収入があった方が安心だし、何より気が紛れるので……あと実は、夫には言っていませんがカウンセリングにも通っています」

このカウンセリングも友人の勧めで、ご主人との関係回復のために試したとのことですが、大きな気づきがいくつもあったと言います。

「このセッションでは、まず徹底的に相手の立場になる練習をするんです。相手の姿形、着ている服や表情の詳細まで思い浮かべて、その上で、今度はその彼の視点で“私”を見てどう思うか・感じるかを考えます。最初、これがなかなかできなくてツラくて……というか、私は相手の立場に立って物事を考えることがすごく苦手だったんだと気づかされました。

だから夫が傷ついていることも、音信不通になった原因もわからなかった。でもよくよく考えると、私も相当感じの悪い妻だったとわかりました。最近は、おかげで少しずつ彼の心の動きがわかるようになってきて。以前はとにかく夫の一挙一動が嫌で嫌で仕方ありませんでしたが、私が変わると、不思議と相手も変わっていくんですね」

 


離婚という選択をせず、現在は比較的穏やかに日々を送っているというアキコさん一家。お話を伺う中で、何よりもアキコさんご自身が別居生活を経て成長しているのが印象的でした。

 

ご本人も仰っていましたが、おそらく1番の転機はアキコさんにとっての幸せ「家族で仲良く平和に過ごすこと」を明確な目標としてから、ご主人に歩み寄ったり慎重なコミュニケーションを心がけたりなど、ご自身が大きく変化されたことでしょう。

関係をなるべく円滑にしようとカウンセリングに通われたり、仕事を始めたり、努力されている姿勢も素晴らしいと思いました。

愛し合って結婚した男女とはいえ、夫婦はもともと赤の他人。

結婚という枠に甘んじるのではなく、時にいったん現状を冷静に見直して反省したり、主体的に自分が変わることは重要ですね。

アキコさんは今、きっとご家族にとって頼もしい存在だと感じました。
 

構成・文/山本理沙  

 

 

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