再エネ率が高い九州。政治主導で普及率が上がった浜松市の例


アツミ:再エネ普及が進んでいる県や地域もあるのでしょうか。堀さんは福岡に移住していますよね。これはやっぱりエネルギーのお仕事の関係で?

堀:そうです。九州は非常に再エネ率が高く、特に太陽光発電がすごく多いからなんです。春夏のお天気がいい日は電気が余ってしまうので、太陽光発電を止めている時もあるくらい。年間で5~7%の再エネを捨てているので、これを蓄電池にためて夕方に流すことが可能になれば、ゆくゆくは夕方の価格高騰の問題も緩和できます。蓄電池についてのコストや法整備など色々と課題はあるんですが、それを実現するためのテクノロジーを作るのが、私たちの会社が目指しているところです。

写真/Erik Karits on Unsplash

バタ:九州は何でそんなに再エネが多いんですか? 自治体が主導しているんですか?

堀:自治体の主導というよりは、単に余ってる安い土地が多くあり、すぐに転用できたんだと思います。政治主導で普及率がすごく上がった浜松市のような例もありますよ。「電力の地産地消」を目指し、自治体で再エネの電力会社を立ち上げているんです。太陽光発電やEVを導入への補助金もあり、2050年までに地域で再エネ率100%を目指しています。

アツミ:それって国が「発電用の燃料が足りない」と電気料金の値上げに踏み切っても、浜松市は影響されないってことですよね。

堀:そうですね。

バタ:東京都も建築会社が新しい住宅を建築する時に、太陽光パネルを義務化する動きがありますよね。

堀:再エネ100%に向けた方向性としてはもちろんですが、消費者目線でも悪くないと思いますよ。送配電網を使わず自分の家で使い切る場合、発電のコストのみで考えれば、電力会社の小売価格(25円程度で想定)の半分くらいになると思います。もちろん設備への初期投資はかかりますが、太陽光パネルも以前よりもずっと安くなっていますし。

アツバタ:なるほど。エネルギー問題は積極的に情報収集しておいたほうがいいですね。ありがとうございました。


次回は、やっぱり「原発再稼働」しないとダメ? ……を取り上げます。
 

堀ナナ2021年にTensor Energy株式会社を共同創業。「テクノロジーの力で電力のGXとDXを加速する」をミッションとして、再エネ運用プラットフォームを展開。2022年6月に再エネと蓄電池のファイナンスマネジメントサービスの試験運用を開始。AIとIoTによる再エネ&蓄電池の運用最適化、電力や環境価値のアルゴリズム取引を行うSaaSを開発。映画プロモーターからキャリアチェンジして、 2011年に戦略系コンサルとして再生可能エネルギー業界へ。2016年に再エネファイナンス、再エネ発電事業者としてスピンアウト。事業開発チームをリードし、累計300億円の太陽光発電プロジェクトの組成、開発、建設に従事。持続可能なエネルギーを全ての人に届ける世界を作るための挑戦を続けている。Tensor Energy株式会社


取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)

 


 

 

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