クールな7歳女子の意外な反応


「みゆきちゃん、本日はご搭乗ありがとうございました。気をつけてね、お母さん、みゆきちゃんが機内で書いたメッセージ、喜んでくれますように。グランドさん、それでは申し送りの通りによろしくお願いします。機内で変わったことはありませんでした」

 

ショートカットのチーフCAに手を引かれて最後にやってきたみゆきちゃんは、イメージしていたよりもさらに小さく可愛らしい女の子だった。カラフルなスカートは沖縄らしい柄で、おばあちゃんが沖縄で買ってくれたのかもしれない。リュックサック一つで身軽だった。手には機内で子どもに配られるレターセットのポストカードを持っている。

「こんにちはみゆきちゃん。ここからは私がお母さんのところまでご一緒しますね。実は、お母さんいま空港に向かっているところで、あと30分くらいかかるみたいなの。それまで、お姉さんが働いてるところ、見学してみない?」

目線を合わせ、前屈みでニコニコと話しかけたものの、みゆきちゃんの反応は意外にも薄い。

「見学はだいじょうぶ、待ち合わせのところ、3番出口でママを待つから」

三つ編みのおさげを触りながら、しっかりと話す様子に優子は目を丸くした。一人旅キッズはたいていとても大人しく、言われた通りについてくる。当然だ、一人ではまだ飛行機に乗れないからこのサポートを利用しているのだから。しかしみゆきちゃんは、ともすれば一人でも大丈夫なのではないかと錯覚するほどに、声の調子や顔つきがしっかりしていた。

 

優子のイメージする7歳とは違う。全然。

「そう言わないで〜! 普段は入れない、空港のバックオフィスだよ。羽田限定のキッズバッジとキャンディもあるから。ぜひみゆきちゃんに貰ってほしいな」

優子が笑顔で手を差し出すと、みゆきちゃんもそれ以上は抗わず、おずおずと小さな手を伸ばした。互いの手をしっかり握ると、二人、並んで歩き出す。

「沖縄、暑かった? 東京はね、おととい雷と雨がすごかったんだ。なんと飛行機が着陸できなくてね、上空をぐるぐる旋回して、ドキドキしたよ」

「飛行機が? そんなことあるんだ?」

みゆきちゃんはちょっと顔を上げて、優子の顔を見た。

「うん、そうなの。でも大丈夫、飛行機ってすごく丈夫だからね、最後は上手くみんな羽田に着いたよ」

みゆきちゃんは、飛行機に興味を持ったのか、窓際で立ち止まり、キッズスマホで滑走路に並ぶ飛行機の写真を撮った。さすがデジタルネイティブ。手慣れている。そのまま何かメッセージを打ってから、ハガキと一緒にリュックにしまった。

「じゃ、こっち、秘密の扉から入ろう」

優子は芝居っ気たっぷりにキョロキョロと周囲を警戒してから、通路の壁に埋め込まれているテンキーにコードを入力して、スタッフ用の扉にみゆきちゃんを招き入れた。