動物は病気になっても平気なふりをする


動物だって風邪をひいたり、熱を出したり、もっと重い病気にかかることがあります。しかし野生動物は、病気になったからといって、ゆっくりねているわけにはいきません。「体調が悪い」「弱っている」と敵に知られれば、それだけおそわれる危険が高まってしまいます。

オオカミは、ライバルの遠ぼえ(遠くに向むかって「うおぉぉぉぉーん。」というように長く出す鳴き声)が聞こえると、「ここにいるぞ!」とばかりに遠ぼえをかえします。「ぼくはここにいるぞ! ぼくのなわばりに来るなよ!」と、遠ぼえでおどしているのです。でも体調が悪いときには、あえて遠ぼえをかえしません。そんなときに遠ぼえをかえしたら、鳴き声によって弱っていることを知られてしまうかもしれません。もし、おそってこられたら勝ち目がないので、あえてひっそりとしているのです。

また、年をとった飼いネコがふらりと家から出ていって、そのまま物かげで息絶えていることがあります。そのすがたを見て人間は、「ネコは死ぬところを人に見せたくないんだ。」なんて勝手に言いますが、ちがいます。これは、「体調が悪いから、安心して休める場所に行かなければ。」という本能から外に出て、よい場所を見つけて休んでいるうちに力尽きてしまうためです。ネコ自身も、自分が死ぬとは思わないまま、死んでしまった─というのが真相なのです。

 


病気になったネコをなでてはいけない


動物は「なんだか体調が悪いな。」と感じることはできても、「これは病気のせいなんだ。」とは思いません。だから、体の調子が悪いことを感じていながらも、どんどん病気が重くなって死んでしまうことが多いのです。

動物が病気であることを知られるということは、自分を危険にさらすことになります。だから、動物はなかなか弱みを見せたがりません。ことばも話せませんから、人間が動物の病気に気づいたときは手おくれだったりします。とくにネコはくるしいときも鳴かず、ふだんどおりにじっとしていることが多いので、気づくのがむずかしいのです。

 

ネコは、エサをいっぱい食べたあとに、吐いてしまうことがよくありますが、これは、かまないで丸飲みしてしまった食べものを吐きだす「吐きもどし」という行動で、ひどい病気ではありません。少し時間がたてば、またエサを食べはじめます。

ただし、吐いたものに血がまじっていたり、吐くだけではなく下痢をしていたり、ふらふら歩いていたら病気かもしれません。そのようなときは、動物病院につれていきましょう。そして、家につれて帰ったらしずかに休ませます。人間が近づいたり、さわったりするとゆっくり休めません。「つらいね。がんばれよ。」とはげましてあげたくても、なでたりせずに、そっと見守るだけにしておきましょう。