なんとなく見過ごしていたことに共感してもらえるのも映画の役目


これまで80本もの映画に出演してきた役所さん。その役所さんが「出演したい」と思う映画とはどんなものなのでしょうか。

役所:最高なのは、50年後100年後に、映像をもう一度きれいに処理して見てもらうこと。自分が演じるキャラクターうんぬんよりも、僕のこの顔を100年後の人に見てもらえるなんて夢があるし、ロマンを感じます。映画ってほとんどの作品がなくなっていくんだけれど、中には残ってるものもあるわけですよね。どういう作品が残るか? いつの時代に見ても共感できる、普遍的なテーマがある作品でしょうか。僕はエンターテインメントも好きだし、そんな「ああ面白かった!」って作品も大好きです。でも、だんだん年を取ってくると、ちょっと変わってきますよね。

 

何かわからないんですが、今の時代ならではのテーマになっていて、それをなんとなく見過ごしていた人たちが、作品をきっかけに「ちょっと調べてみようかな」となってくれるような。そういうのも映画の役目だと思いますしね。

 

『ファミリア』でも家族というテーマとともに、日本における外国人差別や、移民の窮状が描かれています。役所さんのキャリアには、時にこうした社会に切り込んだ作品が散見されます。今年配信予定の主演ドラマ『THE DAYS』もそんな作品のひとつ。3.11の福島原発事故の現場で起こっていたことを描いた作品です。

役所:原発については昔からいろんな問題があり、皆が話し合ってきたテーマですよね。僕は2004年にも「東京に原発誘致する」と言い出す都知事を描いた映画『東京原発』に出演しているんですが、これも監督の「テレビでは放送してもらえないから」という言葉から始まった作品です。『THE DAYS』も、映画一本ではなく、シリーズとして時間をかけて「あの日何が起こったのか」を描く必要がある作品だと思います。

もちろん、かっこいいアクション映画にも出たいけど、それはちょっと無理かなぁ〜? でも僕のこの顔と身体ではそんなにたくさん変身できないけど、いろんなタイプのいろんな表現の映画に出たいですね。映画にとって多様性は大事なことですし。