守られる役よりも、誰かを助けるヒーロー的ポジションをやりたい


――作品選びで一番大切にしていることは何でしょう。

作品の中のポジションとして、その役がヒーローかどうか。誰かに守ってもらったり、支えたりするヒロイン的な役よりも、自分の人生を切り拓いたり、みんなを救うヒーロー的なポジションであることを重視していますね。『天間荘の三姉妹』も、たまえがそうだったからやりたいなって。

――自ら立ち上がって、誰かを救う役をやりたいと。

やりたいですし、自分に求められているのはそこだと思うんですよね。『あまちゃん』をやるまでは、どちらかというと自分は“月”で、暗いと思っていたんです。やりたかったのも、当時は文学的な映画でした。なので、『あまちゃん』は目から鱗でしたね。「私ってコメディの人、ヒーローの人なんだ」って初めて気づけました。今は、なんならスーパーヒーローをやりたいくらいなので、需要と供給が合ってるんです。

 

――ご自身のニーズをしっかり把握しているんですね。

私に何が求められているか、ニーズを考えながら役を選んで、その中でどれだけみなさんが私に抱くイメージに応えられるかは、すごく考えます。と同時に、そのイメージからどう逸脱して、驚きを持たせるかも考えて活動しているので、正直、面倒くさいです。のんは、めちゃくちゃ面倒くさい(笑)。でも、やりたいことをやれていて、応援してくれる人がいてくれて、めちゃくちゃ嬉しいです。

――これからも続くのんさんの人生録に、『天間荘の三姉妹』主演以降、どんなことが書かれていたら嬉しいですか?

映画をもう1回撮ってみたいですね。『Ribbon』では、こうしたほうがよかったと思うこともあるんですけど、それがまたやりたいという意欲に繋がっていますし、自分自身が触発された作品になりました。それと、続けているリボンをモチーフにしたアートは、もっといろんな広がりを持てると思うので、作ったことのない作品に挑戦していきたいです。

 

――とにかく表現することが好きなのが伝わってきます。

好きですね。こうして表現する仕事に就いていなければ、プータローで孤独に生きていたんじゃないかな(笑)。

 
 


プロフィール)
1993年生まれ。2010年、映画『告白』でデビュー。’12年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で主役に選ばれ、老若男女から愛される俳優に。’16年、劇場アニメ『この世界の片隅に』で主人公の声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭審査員特別賞を受賞。’19年、YouTube Original『おちをつけなんせ』で、主演・脚本・撮影・編集を担当。’21年、長編映画『Ribbon』でも脚本・監督・主演を務める。’17年、レーベル「KAIWA(RE)CORD」を立ち上げ、音楽活動も積極的に行い、12月25日には、横浜赤レンガで行われる「毎日がクリスマス2022」に出演が決定。“創作あーちすと”として、アート活動も展開中。

<作品紹介>
映画「天間荘の三姉妹」

出演:のん 門脇麦/大島優子
高良健吾 山谷花純 萩原利久
平山浩行 柳葉敏郎 中村雅俊(友情出演)/三田佳子(特別出演)
永瀬正敏(友情出演) 寺島しのぶ 柴咲コウ
プロデューサー:真木太郎(「この世界の片隅に」)
監督:北村龍平脚本:嶋田うれ葉音楽:松本晃彦
原作:髙橋ツトム『天間荘の三姉妹–スカイハイ–』(集英社 ヤングジャンプ コミックスDIGITAL 刊)
配給:東映
©2022髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会

10月28日(金)全国公開


撮影/塚田亮平
スタイリング/町野泉美
ヘアメイク/菅野史絵(クララシステム)
取材・文/小泉咲子
構成/山崎 恵