「地方から映画を届ける可能性」に挑戦したい
「ジョゼと虎と魚たち」で鮮烈なデビューを飾り、今期も連続ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』を手掛ける脚本家の渡辺あやさん。関谷さんは、映画配給会社員時代に、宣伝担当として彼女と出会ったそうです。当時駆け出しの新進気鋭脚本家だった渡辺さんについて、関谷さんは「お人柄の良さがにじみ出る本当に素敵な方。それなのに書くものは研ぎ澄まされた感性が炸裂していて、そのギャップが最高なんです。映画もドラマも、絶対観てください」と頬を紅潮させて語ります。
お二人はとても良い関係で仕事をして、関谷さんの結婚式には花嫁衣裳の一部を贈ってくださったほど。その後、超のつく売れっ子になった渡辺さんと、退職して映画宣伝業界を離れた関谷さんは10年ほど連絡を取っていませんでした。渡辺さんの記事を読んで、関谷さんが感銘を受けてショートメールに感想を送ったときも、返信は期待していませんでした。
「ところがご多忙の中、あやさんから返信をいただいたんです。それが2022年の1月のこと。嬉しかったですね。それを皮切りに近況報告をするなかで、あやさんが自主製作・自主配給で、しかも地方から届ける映画の可能性を実験中だ、とおっしゃるんです。
東京から地方に移住した身として、映画や仕事のセンターは東京であることを痛感しながらも歯がゆく思っていた私には、あやさんの取り組みが胸に刺さりました」
関谷さんが、渡辺さんの活躍にことさら胸を熱くしたのは理由があります。
渡辺あやさんは、島根在住の主婦でありながらインターネット上のシナリオ公募をきっかけに彗星のごとく登場した脚本家で、現在も島根に在住していることで知られています。地方にいながら、成功していることが関谷さんに力を与えました。
「それまでも、昔の仲間と話をする機会はありましたが、皆『映画の宣伝は東京にいないと難しい』『地方の宣伝にはお金をかけられない』と言っていました。でもあやさんは、まさにそこに挑戦しようとしている。地方で映画を製作し、地方からプロモーションをしてヒットを飛ばし、東京に凱旋する、というパターンを作りたいと。
そしてあやさんはおっしゃいました。『今、東海地方って、映画文化はどうなってるの? セッキー、力を貸してくれない?』」
脚本家、渡辺あやさんが当時手掛けていた映画は自主製作映画で、須藤蓮さん監督・主演の『逆光』。
やがてチーム『逆光』に、関谷さんが宣伝として参加するようになるのは、その1カ月後のことでした。
次回は岐阜在住・映画業界にブランクのある関谷さんが挑戦した「地方からの映画興行プロジェクト」の全容をお届けします。
関谷 奈美 Nami Sekiya愛知県名古屋市出身。早稲田大学卒業後、映画配給製作会社に入社。テレビアニメ、劇場映画宣伝を多数手掛けたのちに退職。2022年夏には映画『逆光』(監督および主演・須藤蓮氏、脚本・渡辺あや氏、須藤蓮氏)の東海地方宣伝を担当。2023年公開予定の須藤監督新作映画の宣伝プロデュースを手掛ける。
▶Instagram:@ namisekky
▶Twitter:@ NamiSekiya
構成/山本理沙
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