コロナ禍で減った男性の自殺。男性のしんどさは女性・子供へのDVに転嫁


日本でも男性の自殺率の高さは以前から問題視されてきました。経済的に追い込まれた末の自殺が90年代末から激増。全体の自殺者数が3万人台だった当時よりも減って2万人台となった現在でも、男性の自殺者数は女性の2倍です。

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また、コロナ禍での収入源やいわゆる巣篭もりによってDVが増加。男性の自殺者はわずかに減少した一方で、女性の自殺が急増し、中でも若い女性の増加が顕著です。女性の自殺増加の背景には、家事育児介護などの負担の大きさ、DV被害、雇用の不安定さ、経済的な立場の弱さなど複数の要因があると見られています。 「男が稼ぎ、女は男と子供の世話」という男女の役割を前提にした制度が男女格差を生み出し、職場や家庭内での女性の立場を弱くしてきました。

 

多くの人が不安に襲われたコロナ禍では、「稼がない男は価値がない」「女は男の世話係」という旧来の価値観が精神的・身体的暴力となって、人々の逃げ場を奪いました。中でも最も弱い立場に置かれた女性たちの自殺という形でそれが表れていると言えます。「強い男、弱い女」をよしとする価値観は男性を自殺へと追い込むだけでなく、非常時にはこうした形で女性を犠牲にするのです。