最終的には武士たちを取りまとめる尼将軍に


北条政子はフェミニストの原点ではないだろうか。

ドラマでは坂東武者たちが食事をする場面、妻はそばに座って甲斐甲斐しく世話するが、一緒に食事は取らない。そういう時代だった。都では男女が隣を歩いたり横に座ったりすることもなかっただろう。そんな時代、政子はたとえ窮地に追い込まれても状況を受け入れ、怯まずに自分の意見を述べる。状況を、世の中を、自分の理想に近づけようとする。そして最終的には武士たちを取りまとめる尼将軍にまで上り詰めるのだから、あっぱれとしかいいようがない。

2022年度のジェンダーギャップ指数は146カ国中116位、先進国では相変わらずの最低レベルの今の日本に北条政子がいてくれたらなあ、なんて妄想してしまう。日本初の女性総理大臣になっていたんじゃないだろうか。

北条政子(小池栄子)が恐妻として知られるエピソードのひとつが「亀の前事件」。©️N H K

政子の有名なエピソードに「亀の前事件」がある。頼朝が妾・亀の前を囲っていたことに激怒した政子は、妾が匿われていた屋敷を身内の関係者に命じて丸ごと破壊させてしまうのだ。ドラマでは燃やしてしまったことになっていて、頼朝が「何もここまで…」と呟いていた。ドラマを見るまでは政子といったらこのエピソードが強烈で、歴史に残る恐妻というイメージばかりだった。嫉妬という負の感情を露わにすることを厭わないのが政子なのかもしれない。

 

ちなみに破壊された屋敷は今の鎌倉市材木座に位置していたとされる。当時の「飯島」という地名は現在の住所としては存在しないが、逗子マリーナに隣接する公園「小坪飯島公園」や逗子から鎌倉に抜けるトンネル「飯島トンネル」にその名が残されている。破壊された後に亀の前が移り住んだのは葉山の鐙摺といわれており、小さな港やラ・マレ・ド・チャヤがある辺りだ。頼朝は性懲りも無く、事件の後も亀の前のもとに通い続けたそうだ。