【ステップ③】未来形のことばで提案を伝える

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先ほどの例では、理想の未来は「相手が納得したクオリティのものを締め切りまでに仕上げてもらう」でした。その未来を実現するために何ができるかを、ここで考えます。

例えば、途中で何度か声をかけて進捗状況を確認させてもらうこともできます。締め切りまでの時間を長めに取るのも有効でしょう。自分にも、相手にとってもなるべく負担にならない方法を選択するといいですね。

「今までは、締め切りまで2週間程度の時間を取っていましたが、今後は3週間取ることもできます。そうすれば、余裕をもって取り組んでいただけますか?」

と、未来の行動をイメージすることばで提案をします。そして、相手の意見も聴きながら、ベストの方法を一緒に探っていきます。もしも相手がNOと言ってきたら、別の方法を一緒に考えればいいのです。

大事なのは、よりよい未来が来ることを信じること。自分のイメージや思いが人生を作るとよく言いますが、あなたの未来は、あなたが想像した通りになります。よい未来が来ると思えばそうなるし、逆もまたしかりです。自分のイメージや思いが、私たちの人生を作っているのです。だったら、よりよい未来を思い描く習慣をもったほうがいいと思いませんか?

苦手な相手や高圧的な人には、こちらも同様に構えてしまいがちです。しかし、人間関係は鏡のようなもの。こちらが態度を柔らかくすれば、相手の態度も柔らかくなり、戦うことなしに落ち着いて話ができる関係性が作れる。まずはそう信じて、3ステップを試していただければと思います。

 


著者プロフィール
船見 敏子(ふなみ としこ)さん

株式会社ハピネスワーキング代表取締役、公認心理師、産業カウンセラー、1級キャリアコンサルティング技能士。青山学院大学文学部英米文学科卒業。大手出版社で雑誌編集に携わり、経営者、俳優、ミュージシャンなど1000名超の著名人を取材。インタビューが下手なことに悩み、カウンセリングを学び始めるや、その意義や奥深さにたちまち魅了され、職業にすることを決意。2005年にカウンセラーに転向。以後、全国の企業等で研修、コンサルティング、カウンセリングを通じ、メンタルヘルス対策支援・組織活性化支援を行う。幸せに働く人、幸せな職場を増やすことに情熱を傾けており、研修・講演実績も含め約1000社・約10万人のメンタルケアに携わってきた。ある企業のカウンセリングは予約が取れないほど人気で、リピーターも多数。メンタル不調者を6割減らした実績もある。著書に『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)、『職場がイキイキと動き出す 課長の「ほめ方」の教科書』(左右社)、『「聴く力」磨けば人生うまくいく!』(マガジンハウス)、『愛される聴き方』(インプレス)など。

『言い返せない人の聴き方・伝え方』
著者:船見敏子 日本能率協会マネジメントセンター 1815円(税込)

ハラスメントや嫌み、マウント、クレームといった理不尽な目に逢いながら、「言いたいことを言いにくい」「言い返せない」と感じガマンを重ねている人に対し、「闘わずして平和な未来を相手と一緒に作っていく」ための会話術を伝授します。さらに、精神の「セルフメンテナンス術」など、メンタルヘルスの維持に役立つ情報が満載。対人関係のストレスを軽減してくれる一冊です。


構成/さくま健太