コロナ禍の緊急事態宣言下、あなたは自宅の窓からどんな景色を眺めていましたか? 外出できるようになった今、その時の景色やあの時の気持ちを思い出すことはできますか。書籍『世界の家の窓から 77ヵ国201人の人生ストーリー』を見ていると、そんな問いかけをされている気がしてきます。本の元になったのは、コロナのパンデミック中にFacebookに立ち上げられた1つのグループ、「VIEW FROM MY WINDOW」への投稿。投稿ルールは、「自宅の窓から撮影した写真1枚に、状況を説明するコメント添える」というシンプルなもの。
多くの人がロックダウンで孤立する中、グループは瞬く間に拡大。今では世界100カ国、350万人以上がつながるグループに成長しています。この「VIEW FROM MY WINDOW」の創設者であるバーバラ・デュリオさんは、同プロジェクトを通してどんなことを感じたのでしょうか。『世界の家の窓から 77ヵ国201人の人生ストーリー』の日本版書籍発刊を記念して来日したバーバラさんに、お話を伺います。
バーバラ・デュリオさん
ベルギーとオランダを拠点に活動するデザイナー。2020年3月、コロナウイルスが急拡大し、各国でロックダウンが始まるなか、Facebookグループ「VIEW FROM MY WINDOW」を開設、アムステルダムのホームオフィスの窓から写した1枚の写真を投稿。人や食べ物は入れず、ただ自宅の窓からの眺めを写すのが投稿ルール。そこにしかなく、どこにでもある日常風景、添えられたコメントの味わい深いライフストーリーが共感と感動を呼び、欧米を中心に爆発的にシェアされ、3週間で100万人が登録。現在350万人を突破。
たった1枚の写真からでも、きっと会話は生まれる
――世界の人々に「自宅の窓からの眺め」の写真とコメントを投稿してもらうというアイデアは、どんなふうに思いついたのでしょうか?
バーバラ・デュリオさん(以下、バーバラ) 2020年は世界中がロックダウンして、誰もが「家の中」に閉じ込められました。私は元々旅行が大好きなので、みなさんと同じように、どこにも行けないもどかしさを感じていたんです。そんな時、ベルギーの友人と電話で話していて、「色々な国の風景が見られる“ポストカード”のようなものが作れたらいいんじゃない?」というアイデアを思いつきました。みんな、色々な国のきれいな景色を覗きたいはずだし、1枚の写真からコミュニケーションが生まれたら楽しいよね、そんな話をしていました。
――最初のアイデアはFacebookではなく、ポストカードだったんですね!
バーバラ でも、すぐに「ポストカード」のアイデアは諦めました。なぜなら、故郷ベルギーの郵便システムはとてもルーズで、配達が遅れるだけでなく紛失されることもしょっちゅう。私はいつも郵便局で叫んでいたからです(笑)。Facebookならみんなやっているし、スマホ一つで投稿できます。何より、遅れたり紛失することもありません。
「このコロナ禍を生き残る」。写真に添えられた投稿者の思い
――それにしても、みなさんの「自宅の窓からの眺め」を見ていると、緊急事態宣言下の状況を思い出します。
バーバラ 写真はもちろん、みなさんの文章もとても素敵で。私が心を打たれたのが、イギリスの大学に留学していたと思われる、インド人の方の投稿です。1年の修士課程で、あと半年を残してロックダウンに。周りの学生たちが次々と寮を後にする中、学生寮からの写真に添えてこんなことを書いてくれています。
「(前略)春は訪れます。木々も芽吹くことでしょう。いずれワクチンも開発され、私のような一部の恵まれた者たちは、このコロナ禍を生き残るでしょう。しかし、いくつかの失われたものは、おそらく、永久に戻らない。2020年という年は、歴史に刻まれるでしょう。」 ――Rohit Lahotiさん イギリス・ロンドン 2020/3/22
こうした投稿を見ていて、私は早い段階から「これは本という“形”にして残さなければ」と考えました。ネット上ではどうしても“流れていってしまう”から。気づけば、本当にたくさんの人たちが、写真とメッセージを投稿してくれるようになっていたのです。
世界中の人々が撮影した「自宅の家の窓から」の風景
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1枚目:Anastasiia Tykhaさん(ウクライナ・キーウ)/2枚目:Lynn Longdenさん(スペイン・シエラカブレラ)/3枚目:Imran Mahammedさん(バングラデシュ・コックスバザール)/4枚目:Tran Thanh Thaoさん(日本・埼玉)/5枚目:Cathy Ia Boudragueさん(フランス・ペイユ)
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