歯周病対策には、殺菌や抗炎症成分入りを

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年を重ねるにつれ、歯周病が気になる方が多いと思います。そのため、歯みがき剤を選ぶ際は歯周病対策が基本になるでしょう。

ターゲットとなるのは、歯と歯ぐきの境目。ここにできる歯周ポケットは、食べかすや細菌などが結びついて形成される「バイオフィルム」の温床になりやすい場所です。そして、歯周病の前段階になると、歯ぐきの炎症が起きてしまいます。そのため歯周病対策には、殺菌成分や、抗炎症成分を配合した歯みがき剤が向いています。殺菌成分であるCPCや抗炎症成分のトラネキサム酸など、テレビコマーシャルなどで耳にしたことがあるかもしれません。

 

なお、歯周病を引き起こす菌の中でもP.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌)は歯周病を重症化させる菌として知られています。歯科医院では歯周病がなかなか改善しない人に対して、P.g.菌に特化した歯みがき剤を処方することがあります。

最近は、歯周病対策歯みがき剤でも、フッ素化物を高濃度で配合するなど、全方位に対応するものが増えています。パッケージと成分をじっくり見てください。

<歯周病対策には殺菌と抗炎症成分入りの歯みがき剤を>
・殺菌成分
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)……バイオフィルムに浸透して殺菌する
塩化セチルピリジニウム(CPC)……細菌の増殖を防ぐ
・抗炎症成分
グリチルリチン酸系の成分やトラネキサム酸……歯肉の炎症を緩和する

ちなみに、患者さんに時折、歯みがき剤について尋ねられることがありますが、「目的に合ったものを常に数種類使い分けています」と答えると大変驚かれます。私の場合、会議などでコーヒーやお茶を飲んだ後には着色汚れを浮かせるタイプ、就寝前は歯周病予防のために殺菌成分が含まれているものを、という具合に変えています。

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口の中も加齢によって当然変化しますが、60歳でもケアが行き届き、驚くほどしっかりした美しい歯を保っている方もいます。一方で、若くても、年齢+何十歳なのではと思われるほど、老化しているケースもあります。そういった方々と接していると、「自分の口の中を知ること」そして「自分に適した歯のケアの知識」が重要なのだと痛感します。

著者プロフィール
照山裕子(てるやま・ゆうこ)さん

歯科医、歯学博士、厚生労働省歯科医師臨床研修指導医、東京医科歯科大学非常勤講師。日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。世界でも専門家が少ない『顎顔面補綴』を専攻し、日本大学歯学部付属歯科病院、東京医科歯科大学病院で臨床経験を積む。口腔ケアに 関心をもってもらいたいと刊行した著書『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)がベストセラーに。最新刊は『“食べる力”を落とさない!新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)。歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、いわば口腔ケアの伝道師として、メディアにも多数出演している。

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著者:照山裕子 日経BP 1760円(税込)

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構成/金澤英恵