補習をやめても偏差値激伸び!36人が海外の大学に合格


ぼくが就任当初に掲げた、補習補講、夏期講座、受験対策の廃止は、3年目にやっと全廃することができました。図表①は就任3年後の一期生の成果です。海外の30大学に計36人が合格しました。当時の世界大学ランキングで33位のオーストラリア・メルボルン大学、60位の同シドニー大学とクイーンズランド大学にも合格者を出しました。ちなみにこの年の東大は39位、京大は91位です。一人で3校、4校に合格した生徒が多いので、実際に海外の大学に進学したのは8人です。

 

図表① 平成29年度の箕面高校の合格実績

 

国内の難関大学への合格者も増えました。地域4番手の高校ではそうあることではありません。ぼくの出身校、同志社には70人が合格しました。それまでは20人前後でした。TOEFLの成績も図表②上のとおりです。初年度にチャレンジした40人のスコアが、翌年には倍近くに伸びています。中央値が60点以上ですから、東大生の平均45点、学校の英語の先生の平均55点を軽く越えています。
 

図表② 箕面高校の成果

 

生徒の模擬試験の偏差値も大幅にアップしました(図表②下)。就任前、進研模試の英語で偏差値60以上の2年生は40人に届きませんでしたが、就任2年目は80人以上になりました。国語も数学も倍増しました。補習をやめても、受験対策をやめても、生徒の成績はアップしたのです。つまり、偏差値優等生を育てる教育をやめ、生徒がチャレンジできる環境をつくっていった結果、偏差値も上がり、海外の大学や国内の難関大学に合格する生徒が増えたのです。


著者プロフィール
日野田直彦(ひのだ なおひこ)さん

武蔵野大学附属千代田高等学院および武蔵野大学中学校・高等学校の中高学園長、千代田国際中学校校長。1977年大阪府生まれ。幼少期をタイで過ごし、帰国後は欧米の最先端の教育に取り組む同志社国際で揉まれたアジアと欧米の教育を知るハイブリッド帰国子女。大学卒業後、進学塾、私立中高の新規立ち上げ、公立・私立の校長とほぼあらゆる教育現場を経験。36歳(当時最年少)で校長になった大阪府立箕面高校では、地域の4番手の「普通」の学校の生徒が海外大学に多数進学し、注目を集める。武蔵野大学中学・高等学校では、定員割れ、予備校が出す偏差値が「判定不能」、9年で5人も校長が交代する倒産寸前の状態からV字回復し、学校説明会には毎年のべ1万人以上もの親子が参加している。2022年には募集を停止していた千代田高等学院の中学を千代田国際中学として再開。学校再建のロールモデルを構築すべく奮闘中。

『東大よりも世界に近い学校』
著者:日野田直彦 TAC出版 1760円(税込)

倒産寸前の学校を毎年のべ1万人以上が学校説明会に訪れるほどの人気校に変えたり、「塾なし、海外経験なし、経済力なし」の公立高校の生徒を海外大学に多数進学させたり。旧態依然とした学校教育に異を唱え、革新的なやり方で輝かしい実績を残してきた現役校長の軌跡と教育論を記載。未来にしっかりと目を向けて挑戦を続ける姿に、現役学生はもちろん、学校教育を終えた大人も元気づけられるでしょう。


構成/さくま健太