諸外国の中には利用者が特定の決済手段を事業者から強要されることを社会的に許容しないところもあり、これについては意見が分かれるところでしょう。特に日本の場合、欧米と比較してクレジットカードの手数料が極めて高く、カードがあまり普及しなかったという経緯があり、この問題を複雑にしています。

よくニュースでは、「欧米ではキャッシュレス化が進んでいる」と報道されていますが、ここでいうところのキャッシュレスというのは、多くがクレジットカードやデビットカードのことを指しており、スマホ決済ではありません。

スマホ決済を実施するには、銀行口座かクレジットカードを紐付けする必要が出てきますが、欧米各国の場合、もともとクレジットカードでキャッシュレス決済をしていましたから、わざわざスマホ決済に乗り換える人はそれほど多くありません。ほぼすべてのお店がカード決済の端末を持っているので、日本のようにカードが使えない店がある、という事態はほぼ考えられない状況です。

ところが日本の場合、カードのインフラが十分に整っておらず、手数料が高止まりしていたこともあり、カードでキャッシュレス化を実現することができませんでした。その結果、スマホ決済サービスが乱立する状況となってしまったわけです。

写真:Shutterstock

ちなみに中国のように、クレジットカードがまったくといってよいほど普及していなかった国の場合、一気にスマホ決済が主流となりましたから、銀行口座と紐付けるのが当たり前であり、カードの締め出しという問題は起こっていません。

 

日本の場合、こうした特殊な事情があるため、現時点においても複数の電子決済手段が併存している状況であり、各社は顧客を囲い込んで利益を高めようする一方、利用者は使える店と使えない店があるという不便さを受け入れなければならない状況です。

残念ながら日本特有のこうした問題はしばらく続きそうですから、利用者としては、自身がよく行く店がどのような決済手段を用意しているのかについて考えながらサービスを選択するしかありません。

 

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