買取業者に依頼して手放す


コロナ禍で生前整理や自宅の片付けを行った方が急増しましたが、コレクションのように集めているものや高価なものはなかなか手放せなかったという方も多いのではないでしょうか。親世代にとって、着物もその「手放せないもの」の1つです。

今回の相談者・牧子さんは、お母様の大切なものを捨てたくないという気持ちがあるようですので、捨てる以外の選択肢をいくつかご提案させてください。まずは買取業者に買い取ってもらうという方法。金額的には二束三文にしかならないかもしれませんが、それでも故人のお気持ちは無駄にならないような気がします。

主に以下のような業者が着物の買取を行なっています。

バイセル
年間100万枚以上の着物を買い取りするバイセル。買い取った着物は全国各地の高島屋でも販売しています。

福ちゃん
買取実績800万点。国内外に独自の販売ルートを数多く所有しており、高額な買取価格を実現しています。

ザ・ゴールド
梅沢富美男さんのCMでお馴染みのザ・ゴールド。全国77カ所に直営店舗を持っています。

買取には、自宅へ出張・宅配・店舗持ち込みの3つの方法があります。買取手数料が無料で、かつ専門家に着物の価値を見極めてもらえるのはメリットです。

ただし、着物の買取は多くの場合想定しているよりも安価になるので、希望する金額にはならないかもしれません。業者を決める際は、着物査定士がいるか、クーリングオフ制度があるかなど、信頼できる業者を選んでください。買取に関しては「着物堂」という着物買取・査定の情報メディアまであるので、詳細はこちらで確認してみても良いかもしれません。

最近では、浴衣などがリサイクルショップでも扱われるようになりました。ただし着物の査定専門家がいるわけではないので、簡易なマニュアルに沿って買取がされる場合が多くあります。まずは取り扱いや査定方法を確認してみてください。


NPOなどに寄付する


お金にならなくても、少しでも誰かの役に立てたいのであれば、NPOに寄付することも一案です。着物を世界に広めることを目的とする団体や、発展途上国に支援物資として送っている団体に寄贈することで、着物を役立ててもらえます。

NPO日本きもの文化振興会
こちらのNPOでは、明治から昭和初期の「銘仙きもの」限定で寄付を募っています。

古着deワクチン
回収キットを購入することで、「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」を通じて、開発途上国の子どもにポリオワクチンを届けることができます。着物もOK。

NPO法人運営のセカンドライフ
寄付したい着物をまとめて箱に詰めて送るだけで、全国どこからでも寄付が可能です。
 

リメイクして再利用


生地によっては、ワンピースやストール、バッグやポーチなどにリメイクすることができます。気に入った柄や思い入れのある着物であれば、形を変えて身に付けることができるのはメリットです。

多少費用はかかりますが、普段から身につけられるような現代的なデザインに作り替えてくれる着物リメイク専門店もあります。

TSURUTO
2020年より本格的にオンラインでの着物リメイクのサービスを開始。リメイク後のデザインは、Webサイトに掲載されている画像から選択します。

カナタツ商店
年間数千点の実績を誇る着物リメイク専門店。形見分けで最も人気があるという印鑑ケースは、3630円で対応してくれます。

カルチャーセンターなどでは、専門家がリメイクを教えてくれる講座もあります。何枚もリメイクするのであれば、ご自身で手掛けてみるというのも良い選択ではないでしょうか。

他に、持ち続けたいけれど保管場所に困るという方は、預けた着物をシェアリングとして活用してもらう「KIMONO CLOSET」というサービスもあります。こちらは20点まで月額2200円という格安で預けられる上、年に3回カビなどのリスクを減らす虫干しまで行ってくれます。

可能であれば生前確認を


親御さんが着物をたくさん所有していることが生前からわかっているのであれば、「どの着物を子どもに受け継いで欲しいのか」「売っても良いのか」「ゴミとして処分して良いか」を話し合っておくことも大切です。

「着物=高価」という先入観がありますが、紬や絹などの生地、訪問着や振袖などの種類によって価値はさまざまです。持ち主に価値や思い入れを確認しておくと、処分の際の参考になります。

遺品の処分・決断はお早めに


高価で親の形見となると、処分には勇気がいるかもしれません。ですが、不要であったりずっとタンスにしまったままの着物は早めに処分するのが賢明です。保存が長くなると、虫食いやシミなどができ、価値が下がる原因につながります。また、ある程度の保管場所が必要なので、部屋がなかなか片付きません。

着物はその時々に応じて、適切な着物や好きな着物を選ぶものです。多くの着物をお持ちであれば、取捨選択し、数枚を残しておくことをお勧めします。

中にはご自身で処分の決断ができず、子どもに捨ててもらいたいという方もいます。ですが、自分が悩ましいことは子どもも同じ負担を感じます。さらにそれが先祖代々の着物となっては荷が重すぎるので、親御さんが存命のうちに話し合っておくのが得策ではないでしょうか。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

 

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