夫が妻に「マウント」する理由


「彼と別れるためには、とにかく仕事の状況を立て直さなければなりませんでした。コロナ禍で飲食業界が大ダメージを受ける中、うまくいかないことも不安もたくさんありましたが、がむしゃらに動き続けるうち、なんとか収入は回復していきました」

一方で夫の勝也さんは、会社員であるため経済的ダメージはないものの、引き続き在宅勤務で家に篭っており、会社からも外出自粛を促される状況。そんな中で、忙しく外で動き回る妻に過敏になり、小言や文句を口にすることが多くなったそうです。

「外に出るのは不謹慎だとか、お前が家にコロナのリスクを持ってくるとか、事あるごとに細かく嫌味を言われるようになりました。今思えば、彼も少し鬱っぽかったのかもしれません。長期間家に篭り、家族以外とコミュニケーションすることはほとんどなく、テレビをつければ暗いニュースばかり。

コロナ禍の鬱憤を、私に文句を言ったり、マウントを取ることで無意識に和らげていたんでしょう」

夫婦の話を聞いていると、基本的には男性の方がストレス耐性が低い傾向にあるように思いますが、にも関わらず、そのストレスを発散したり解消する方法を持ち合わせていないことが多い印象。

結果、妻にそのストレスをぶつけ、モラハラ発言・行動に出る……というループにはまるパターンが発生しがちですが、しかし令和の妻たちは、そんな夫の甘えに黙って耐えることは少ないのです。

「彼の鬱陶しい発言にはイライラしましたが、でもそれが、さっさと彼と離れるために仕事をしよう! というエネルギーになりました。夫への気持ちが冷めたどころか、“敵”のような認識に変わって。嫌味はできるだけ受け流して、ひたすら仕事に打ち込みました」

 

「そんなとき、仕事の関係で今の彼に出会いました。まだ20代で、なんなら私が産めるくらいの年齢だった彼に、もちろん当初は何の感情も持っていませんでした。ただ、仕事で接する時間が増える中で、やたら私に懐いてくれてるなあとか、よく電話をしてくる子だなあと思っていました」 

年下の彼・晃さん(仮名)は、20代という若さゆえか、わかりやすく珠美さんに好意を見せるようになりました。その好意にはピュアさや思いやりが感じられ、ギスギスした夫婦関係に疲れていた珠美さんも、だんだんと心を開くようになっていったそう。

「ケチな上に、昭和の男尊女卑の価値観を振りかざす夫に辟易していた時だったので、素直で温和な彼が魅力的に思えました。プライベートな話をするようになり夫の愚痴をこぼしても、全面的に私に寄り添って味方として話を聞いてくれる。

ロジカルに説教されることがないので、彼と一緒にいると楽だと思うと同時に、『ああ、夫といる私はずっと無理をしてたんだな』と気づいてしまい……感情に抗えず、男女関係になってしまいました」

ちなみに珠美さんと勝也さんは事実婚の状態でしたが、事実婚であっても貞操義務は法律婚とは変わらないため、この場合は「不倫」となります。

「性格上、私はさほど器用ではなく、きっとわかりやすいタイプなんでしょうね。年下の彼と付き合ってまもなくすると夫に勘付かれ、ますます口うるさく束縛されるようになりました。もちろん法律上、不倫しているのは私で、悪いのも私です。でも、別にバレたらバレたでいいやという感じでした」

パートナーへの感情が消え、かつ経済的にも自立した珠美さんは、このとき「そもそも正式に結婚しているわけじゃないし、夫がいなくなっても何も困らない」と思っていたそう。

けれど、そんな態度が火に油を注いでしまったのか、勝也さんは恐ろしい行動に出るのです。