登録者数36万人! 人気のYouTubeチャンネルを主宰するパリ在住エッセイスト・井筒麻三子さんが、待望の初書籍『GORO GORO KITCHEN 心満たされるパリの暮らし』を4月に刊行。今回はこの新刊から、麻三子さんにとってのフランス語の話をご紹介します。

 
『GOROGORO KITCHEN 心満たされるパリの暮らし』(講談社) 著/井筒麻三子  写真/Yas

フランス暮らしを始めて9年が経ちますが、相変わらず必要だなと思うのがフランス語の勉強です。フランスに住んでいれば、ペラペラになるでしょう? と考える人も多いと思いますが、それができるのは子供だけ。もちろん大人でも語学能力が高い人はできるのかもしれません。でも普通の人がフランス人と対等に話をし、相手に理解してもらえる会話を繰り出せるようになるには、勉強を続けることが必須だと感じています。

大好きなブロカントショップ『Pan Paris』のオーナー、ミレーナとギヨームと。毎回行くたび快く迎えてくれるので、ついつい話し込んでしまいます。

以前はさっぱり英語が通じなかったフランスですが、その必需性を感じて勉強する若者が増えたせいか、パリだと旅行会話程度なら、英語でなんとかなるようになってきました。とはいえ、旅をするのと生活をするのはまったく別。何か困ったとき、病気になったとき、トラブルに巻き込まれたとき、自分を守ってくれるのは言語です。

 

以前、友人のフランス人マダムに話を聞くことがあったのですが、難しい内容をフランス語で伝えられる気がせず、英語でいい? と聞いたところ言われたのは「いいけれど、マミコ、ここはフランスなのよ?」。

まさにマダムのおっしゃる通りです。国の文化である言語を理解しようとしなければ、その国のことは理解できない。そして言語は、失敗を恐れて楽なほうに逃げようとすると、いつまでも上達しません。

私は周囲から語学が得意と思われがちなのですが、自分を客観的に見ても、能力的には至極普通だと思います。フランスにだいぶ長く住んでいますが、正直今も「フランス語できますよ」と胸を張って言える日が来るのだろうか? と遠い目になるほど。苦手意識がありすぎて、ついつい普段からフランス語を話す場面を避けていました。

中でも苦痛なのが、電話。身振り手振りでの説明ができないので、言語能力の度合いが浮き彫りになるからです。見かねた夫が「自分もそうだったけど、嫌だからと避けていたら、いつまで経っても上達しないよ? 何も考えずにパッと電話できるようにならないとダメだよ」と言ってきたほど。

そんなことわかってるし! と思っていた頃、私の滞在許可証のことで弁護士さんに相談しなくてはならない問題が発生。もはや電話しないわけにはいきません。毎日のように事情説明をしているうちにふと、あれ? 私、電話する前に「何を言おう」と考えあぐねたり、電話することを後回しにしなくなっているぞ、と気がつきました。

もちろん外国語をスムーズに話せるようになるには慣れだけではなく、文法を
理解したり、語彙を増やしたりといったことも必須です。でもこの経験を経て、正しく話そうとすることよりも、間違うことを恐れず、自分の言いたいことを伝えようとする気持ちが大事なんだなと感じました。


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【写真】フランスの友人たちの素敵なお部屋とお庭
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