ボーッとするのはNG。更年期以降の人生にこそ「推し活」を

 

「最近の研究では、脳の海馬からテストステロンが分泌されていることがわかってきました。その量は性腺(精巣・卵巣)から出るものより少ないですが濃度が高いのです。薄い水割りを飲むより少量のストレートでくいっとウイスキーを飲むと効くように、細胞への刺激が強いのが脳分泌のテストステロンなのです。

歴史を振り返れば、去勢された宦官が政治を動かしてきた記録が多数残っています。精巣がなくとも脳で分泌されたテストステロンでパワーを発揮していたのではないでしょうか? ただし、脳は意識的に使わないと分泌されません。ボーッと生活しているだけでは、脳でテストステロンはつくれません。

 

最近よく耳にする『推し活』は、テストステロン活動としてもとても良いと思います。脳に刺激を与えることでドーパミンも出ますし、仮想恋愛モードでオキシトシンも分泌。推しを追っかけるためのチケット争奪戦、スケジュール管理、遠征のためのさまざまな手配など忙しく動かなくてはいけないですし、外出の機会が増え見た目にも気を遣うようになります。

そして何より生きる糧があるというのはいいことです。更年期後の人生も長く続きます。いくつになっても自分がまっしぐらに夢中になれるものを見つけることが、テストステロンのアップに、ひいては健康寿命を延ばすことにつながるのだと思いますよ」

 

関口 由紀(Yuki Sekiguchi) 
女性医療クリニック・LUNAグループ」理事長。人生100歳時代の日本の中高年女性の生涯にわたるヘルスケアを実践する第一人者。女性医療のスペシャリストであり、女性泌尿器科分野の専門医として、特にミドルエイジ以降の女性のフェムゾーンの悩み、セックスの悩みに寄り添う。2022年5月には、女性の性や身体に関するオンラインプラットフォーム「Femzonelab フェムゾーンラボ」をスタート。著書に『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引』(径書房)『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)など。


取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣
イラスト/shutterstock

 

 

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