日々をシンプルに生きて楽しむという姿勢に共感


問題になったことのひとつは、お互いの友達との付き合い方でした。英明さんはとにかく友人と過ごす時間が長く、週末も夜も遊びに来たそう。そしてしばしば新居である神奈川県郊外の一軒家で、たくさんのお酒を飲み、盛り上がったといいます。

彼にとってはそのライフスタイルが自然でしたし、他人と一緒にいて疲れないタイプなのでストレスもない様子。しかし早苗さんはそうはいきません。妻としてできるだけおもてなしをしたいし、人前に出るときはある程度きちんとするのが習い性の彼女にとって、その付き合い方は落ち着かないものでした。

 

「私が育った環境は、やっぱり恵まれていたんでしょう。友人たちは皆、家庭が生活のベースになって機能していました。でも夫の周辺では、親御さんが自分のことに手一杯で、子どもに愛情や時間をかけられないこともあったようです。その分、少年時代の仲間の結束が固く、熱い友情がありました。私は無意識に、休日はおうちでゆっくりしたいだろうな、ご家族でどこかに行くだろうな、と考えて遠慮するようなシーンも、夫と仲間はぐいぐいくる。若い頃、切実に仲間が結びついていたんだろうなと想像しました」

 

早苗さんの常識には当てはまらないような振る舞いや言葉もありましたが、次第に慣れていったそう。妻として、伴侶を理解しようという愛情が伝わってきます。

次第に家族ぐるみの付き合いも増えていくと、早苗さんは感心することが増えていきました。若い頃はやんちゃだったという夫の友人たちは、その体力や度胸を活かしてハードな仕事をこなし、立派に家族を養っていました。

比べるものではありませんが、早苗さんがこれまで生きてきた「日本経済の先行きは不透明で、結婚をマイナスなものと捉え、子育てしにくい日本」という文脈で語られてきた側面とは違うものが見えてきたと言います。

「好きな人と結婚して、見切り発車みたいなところもあるかもしれないけれど、幸せになれるかを考えすぎるのではなく、シンプルに幸せにむかってやれることをやる、生活する、という姿勢に励まされて。自分はいろいろ複雑に考えすぎていたなと反省しました」

なんともいい話ですが、実はここでは終わらないのが夫婦の厄介なところです。

後編では、いよいよ子育てに取り組む中で露呈する夫との決定的な違い、その弊害と解決方法について検証します。
 

写真/Shutterstock
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
 

 

 

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