元気な時は「仕事なんてしないで毎日ゴロゴロしていたい」なんてふざけたことを言っていたのに、病気がわかった途端、「仕事がしたい」と強く思うようになりました。

それに手術や治療を無事に終えた後は、普通の生活が待っています。先のことを考えると余計に仕事を切らしたくありませんでした。

友人たちからは「治療に専念したほうがいいんじゃない?」と口々に言われたのですが……。
悩んだ結果、仕事はほとんど減らさずにそのまま続けることを決めました。

ライターやWEB編集は、幸いPCさえあればどこでもできる仕事。入院中もPCを持ち込んで、普通に仕事をしていました。

もちろん、術後など全く動けない期間もあります。事前に医師に相談したり、同じ手術を受けた知人にヒアリングしたりして細かいスケジュールを立て、連載コラムの執筆や編集業務は入院前に前倒しで進めておきました。そのおかげで仕事はうまくこなすことができたのです。

入院が長引くとだんだん気が滅入ってくるものですが、病院のベッドや休憩ルームでコラムを書くことが、私にとってはかなりの気分転換になりました。

ただ、仕事関係者にがんであることを伝えるかどうか? は、少し悩んだ時もありました。

私に依頼した仕事が、病気のせいで中断してしまうことを恐れる取引先もいると思ったからです。また、気を遣われて今後の仕事の依頼が減ってしまう可能性もあり、不安でした。

結局、数年前から固定でお仕事をもらっているメディアや取引先の担当者や責任者には、病名も含めてきちんとお話しておくことにしました。

「万が一何かあったときは、ご迷惑をおかけしてしまうかもしれない」と断った上で、「それでも仕事は続けさせてほしい」という本音を正直に伝えました。

ミモレの編集部もそうですが、私が一緒に仕事をしている方々は、アラフォーや40代の女性が多いです。彼女たちは、単なる仕事仲間としてだけではなく、同じ女性として理解と応援をしてくれました。婦人科系のがんということもあり、女性同士の絆を感じることが多かったです。

 

体調がつらくて執筆どころではなくなった時期もありましたが、そんな時に私を救ってくれたのが、佐藤友美さんの『書く仕事がしたい』という本でした。

タイトルどおりライターとして生きていきたい人向けの本なのですが、その中に「締め切りは本来守るべきですが、どうしようもない時はSOSを出す勇気を出すこと。命より重い原稿なんて、絶対にない」というような一節があります。

その一言に何度救われたことか……。「本当にキツくなったらSOSを出そう」と思うようにしていたので、自分を追い込まずに仕事を続けることができました。

会社員の場合は、上司の理解と協力がカギ


ではフリーランスではなく、会社員の場合はどうでしょうか。会社に所属していれば、休職中の手当が出るケースが多いと思いますが、がんになって不安なのはお金の問題だけではありません。

同僚に病気であることが言いにくかったり、同僚に迷惑をかけたくなくて、長期の休みが取りづらいという人もいるでしょう。あるいは、長期で休んだ場合、復帰後に再び戻る場所があるのか不安に感じる人もいるかもしれません。

同じく婦人科系のがんを患った会社員の友人に話を聞くと、彼女の場合は、上司がとても理解のある人だったそうです。100%リモートで仕事ができるよう整えてくれたので、休職せずに仕事を続けることができました。そしてやはり彼女の場合も、治療をしながらでも仕事があることが、気晴らしになったとのことでした。

 

ただし彼女はかなり恵まれたケースだと思います。

別の知人は、通院で抗がん剤と放射線治療を行いながら、通勤で仕事を続け、想像を絶する辛さだったと話していました。また、がんと診断されてすぐに退職を決断してしまったり、フルタイムの仕事を手放してしまうケースもあるといいます。

実際に、抗がん剤や放射線の副作用があると、通常通りの業務はどうしても負担が大きいですし、同僚には会いたくない人もいるでしょう。元気な時と全く同じような働き方は難しいのが現実です。

しかし、リモートワークが普及したことは、がんの治療をしながら仕事を続けたい人にとっては、大きなプラスだと思います。そのためには当然、上司などの理解や協力が必要不可欠ではありますが……。

突然がんを宣告されると、すぐに仕事を辞めなくてはならないと考える人も多いようですが、選択肢があることを知っておいて損はないはず。もちろん、一旦仕事を忘れて治療に専念するのも一つの方法です。くれぐれも無理はせず、体調と相談しながら様々な選択肢をシュミレーションし、自分に合った選択をできると良いと思います。
 

【漫画】もしも突然がんになったら…仕事はどうする?
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イラスト・文/小澤サチエ
構成/山本理沙

 

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