介護をされるときも大切にしたい「自尊心」

 

福本敦子さん(以下、福本) この本のタイトル、「気持ちいいがきほん」がいいかなぁと思っていて、そもそも本を出したい、森田先生と話したい、と思ったきっかけをお話ししてもいいですか?

森田敦子さん(以下、森田) うんうん。

 

福本 コロナ禍で母の入院生活が長くなって思うように会えなかったんですけど、久しぶりに会えることになって。その頃はもう黄疸が出ていたときだったんですけど、いつも身綺麗にしていて「美人だね」って褒められていた母が、髪はボサボサ、爪はガジガジになっていて。とにかく治療だけを頑張っている時期だったんです。

そんなお母さんを見たときに、病気のケアももちろん大切だけど髪を梳かすとか、気分が軽くなるような香りをそばに置くとか、できるだけ気持ちよくいてもらうことも大切なはずだよなっていう疑問やショックみたいなものがあって。

そんなときに森田先生の『枯れないからだ』を思い出して、「あれ、自分が大切に思うことが全部書いてある」って。今目の前にいるお母さんには十分間に合わせることができなかったけど、これからを生きる私たちはそういう心構えや精神性を持つのにまだ間に合うんじゃないかって。お母さんが死に向かっているのを見て、じゃあ私はどういうふうに生きたいか、っていうことも考えたし、それで森田先生と話したいなって思ったんです。

森田 そうだったんだね。

福本 誰でも歳を重ねるし、いつかはケアされる立場になるだろうから。だけどそうなっても自尊心とか尊厳とか、目には見えないけど大切なことを話したい気持ちになりました。

森田 そうだね。これまで私も自分の活動を通して高齢者の方々を何千人も見てきたけれど、自分のことを「役に立たない物体だ」と思ってしまうのは切ないし、悲しいし、辛いよね。それに痛い、苦しいってなってくると自己防衛本能でボケるしかなくなってくる。