子供が40代になれば、親のどっちかは倒れる

 

森田 それを専門的に学んできた看護師・介護士の方にお任せできたらどれだけ楽か。在宅介護になってみんな辛いのはさ、家族でやっていると介護される側は「ありがとう」って言うしかないんだよね。苦しくてどれだけボロボロでも、いいことを言わないとって思うのね。だからできるならば家族がやらない方がいい。そのためにも全国にケアワーカーを配置できるように、それを仕組み化できるようにいろいろと動いているところ。

福本 それはすごく思います。

森田 強い思いがあるんだよね。

 

福本 私は、いつもオシャレだったお母さんが病でどんどんボサボサになっていく姿を見てるから。

森田 うんうん。

福本 仕方ない反面、守りたいというか。自分のことをどう扱うか、人からどう扱われるかって、すごくその人のアイデンティティに関わるじゃないですか。

森田 そうだよね。

福本 母の経験でまさにそのときに気づいたことだったけれど、いつかは誰もが直面する問題だし、だからこそそうなる前に日頃から「気持ちいい」っていう状態に自分がいることの大切さを伝えておきたいって思って。それで森田先生とお話ししたいなって思ったんです。

森田 たしかにあっちゃんのファンの人たちはまだ知らなくていい年代かもしれないけれど、これからはね。

福本 ぶち当たる。

森田 知っておかないとね。まったく知らない状況でさ、雑誌によく「母親の老後のサポートをするのにこれだけのお金がなきゃいけない」なんて書いてあるじゃない。そんなに怖がらせるんじゃないよって思うんだけどさ。細かい話は別の機会にするけど、本当は30代から知っておかないと、40代には親のどっちかは倒れるからね。

福本 私はお母さんの最期の方の姿を見て、生き方をもっと考えるようになったし。

森田 そうだよね。でもまだそういう経験をしていない人が、あっちゃんのこの本を読んでね、気の持ちようはこうなんだよっていうことを知ることができたらとても意味があるよね。

福本 私はその経験を通して「気持ちいいがきほん」っていうタイトルにしたくなったんです。悲しいこともいろいろ見たからこそ、本当に大切なのはこれだよって自分にも再定義したくなって。

森田 そうだね。だから今こそチェンジなんだよ。今までの古い「こうでなければいけない」とか、苦しいこととかをできるだけないようにして、チェンジしていかないと。

 

『気持ちいいがきほん』
著者:福本敦子、森田敦子 光文社 1980円(税込)

38歳のときにひとつの恋愛がおわり、仕事で転機を迎える。そして、母の死、家族の気持ちの揺らぎ……。美容コラムニストの福本敦子さんは、自分と周りの大切な人たちに一気に変化が押し寄せるなか、「生きること」と「気持ちいいことがきほん」ということについて、考えたといいます。そんな福本さんが綴る温かなエッセイと、福本さんが信頼する人生の先輩・植物療法士の森田敦子さんとの対談、二つのパートから成る本書。大切な人を失う不安に押しつぶされそうな心を、そっと包み込んでくれる一冊です。


写真(著者近影を除く)/Shutterstock
構成/金澤英恵
 

第1回「「お母さんは元気だから大丈夫よ」。病床で笑ってくれた母との、最高の終わり方【福本敦子×森田敦子】」>>