自分らしさとセクシュアリティ


福本 数年前、森田先生が百貨店でイベントをしたとき、バイブレーターを並べてたら驚かれたというお話を聞いたことがあるけれど、本当につい最近まで女性がオープンに性を楽しむことが表現される場って日本には少なかったですよね。

森田 ディスカウントストアの暖簾で仕切られたアダルトコーナーだけにしかないとかね。でも、お話したようにマスターベーションをすることでリラックスできて、きちんとしたリズムで分泌することで身体もメンタルも健康でいられる。

 

福本 そのベースは、性そのものを肯定することや、自分がこうありたいな、と思う性の在り方を自分自身で認めるということですよね。

森田 そう。性に対して罪悪感を持っていると、触れることにすら嫌悪感を抱いて、身体のテクノロジーや本当の快感を知らないままになってしまう。身体の欲求に対して“いけないこと”だと思わず、素直に従うようになると生きやすくなる。すると自己肯定感が上がる。

 

福本 自分らしい性の在り方に自分でYESと言えると人生が豊かになる。そのとき、「性は熟成させるもの」って言葉が味方になると思うんです。生きるうえで性は切り離せないし、自分との関係でもそれは大切。セックスとか膣ケアとかいろいろあるけど、前提は自分をハッピーにするためで、人生を豊かにするためだと思う。

森田 身体も心も全部丸ごと気持ちいい方がいいよね。もちろんセックスするときに相手に気持ちよくなってもらいたいけど、その前に一人で気持ちいいってことを追求することも大事。相手に合わせるだけじゃなくて、まず自分だよ、って。

 

『気持ちいいがきほん』
著者:福本敦子、森田敦子 光文社 1980円(税込)

38歳のときにひとつの恋愛がおわり、仕事で転機を迎える。そして、母の死、家族の気持ちの揺らぎ……。美容コラムニストの福本敦子さんは、自分と周りの大切な人たちに一気に変化が押し寄せるなか、「生きること」と「気持ちいいことがきほん」ということについて、考えたといいます。そんな福本さんが綴る温かなエッセイと、福本さんが信頼する人生の先輩・植物療法士の森田敦子さんとの対談、二つのパートから成る本書。大切な人を失う不安に押しつぶされそうな心を、そっと包み込んでくれる一冊です。


写真(著者近影を除く)/Shutterstock
構成/金澤英恵
 

第1回「「お母さんは元気だから大丈夫よ」。病床で笑ってくれた母との、最高の終わり方【福本敦子×森田敦子】」>>

第2回​「髪はボサボサ、爪はガジガジ...娘の私が守りたかった、母の「美意識」という尊厳【福本敦子×森田敦子】>>